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第104話「謎」*奏斗

 目の前の鏡。  四ノ宮を鏡越しに盗み見る。  ……四ノ宮ってほんと、謎。  ――――……するかな?   男の先輩の髪の毛、乾かしたり、普通する?  オレの髪の毛を見てるから、特に目が合う事は無いまま、オレはただ四ノ宮を観察し続けているのだけれど。ほんとに意味が分からない。  イイ男過ぎる位、イイ男だけど。  薬、で、苦しんでたらしいオレを、助けてくれたのは、こいつだけど。  くっそ。 その後が、意味わかんない。  ……宇宙人めー……。 「ん、終わり」  コンセントを抜いて、四ノ宮がドライヤーを片付けるのを見ながら。 「……ありがと」  一応、礼を言って、離れようとした瞬間。腕を掴まれて、引き戻された。 「――――……っ」  何……?  近い。近すぎ……。  顔を引いてしまうと。四ノ宮が苦笑い。  「オレが怖いですか?」 「え。……ううん、怖く、はない……」  至近距離で、整いすぎた顔を見上げてしまって、思わず眉を寄せて、答えると。 「――――……じゃあ意識、しまくってますか?」 「……っ」  そんな風に聞かれて、言葉に詰まる。 「さっきのビクついたの、何?」 「――――……っだって、お前、意味わかんねえし」 「……何かされるって思った?」 「――――……思ってない。 っもう、早く、帰ろうよ」  四ノ宮の手を外させて、部屋の方に戻ろうと、したのに。  顎に触れられて抑えられて――――……キスされる。 「~~~……っっ!」  もう、ほんとに、何っ……!!   顔を背けようとしても動けなくて、手でどかそうとしても捕らえられて、むしろ尻の辺りを洗面台に押し付けられて、それ以上退く事もできなくなって。 「――――……っン……っ」  深く、キスされたまま、目を開けて、宇宙人をひたすら見つめる。  しばらくして、ようやく離されて。 「………っな、んなんだよっもう!」 「だから、まずキスに慣れて、て言いましたよね」  しれっと言われて、もう、頭ん中はパニック。   「慣れるか! っていうか、まずって何だよっっ」 「………そんなの分かるでしょ」  手が、顎から、首筋に滑る。ぞく、と震える。  ……っ触んなー!! 「――――……オレに抱かれるのも、慣れてもらうから」 「…………っっ」 「嫌なら、ちゃんと付き合う人作って下さい」 「…………っっっっもう、意味わかんねーから! この宇宙人!!」  そう叫ぶと、四ノ宮、びっくりした顔して。  それからクックッと、笑い出す。 「おもしろ、先輩」 「っ面白くないし!」  叫んだ所で、腰に腕を回されて、四ノ宮に引き寄せられる。 「近い、っつの……!」 「――――……なあ、先輩」 「……っ」 「オレとすんの、良かったでしょ?」  とんでもない事、近くで囁かれる。  覚えてる限りの自分の全部が、嫌でもよみがえって、かあっと熱くなる。 「――――……っあれは、く、すり飲んでたからだろっ」 「……ふーん?」  面白そうにニヤ、と笑った四ノ宮は。 「……薬が完全に抜けたら、もう一度してみます」 「――――……」 「それで良くないなら、考えますけど」 「――――……っオッケイしてないから」  クスクス笑う四ノ宮に、もうほんとこいつ嫌、と思いながら、そう返していたら。  四ノ宮が、ポケットで短く音を立てたスマホを見て。   「あ、もう着くって。出ましょう」  そう言った。  着く?  もう、何言ってんだか、全て意味が分からない。  ――――……とりあえず、帰って考えよう。  オレの鞄を渡してくれるのを受け取って。   とんでもない事をしてしまったホテルの部屋を。  四ノ宮の後について、やっと、出た。   

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