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第106話「執着」*大翔
覚悟を決めてから抱いた。
薬をどうにかしてやろうとか、そんなことの為じゃなくて。
――――……今後、先輩と絡んでいこうと決めて。
――――……ほんとに可愛かったと思う。
キスが好きみたいで。ねだって触れてきて。
喘ぎ声も、可愛くて。なんか――――……すげえ煽られて。
こんな顔でこんな声で、今まで抱かれてきたんだと思ったら。
ものすごく――――…… 焦れて、ムカついた。
感じる所を探しながら。
何度もイかせて。泣かせて。たくさん、キスした。
やっと気が付いた先輩には「抜いて」とか言われた。
抜くわけないって言ったけど、それでも抜けって。
――――……抜くわけ、ねーし。
そこまでで、感じる所は結構分かってたから、多分きつい位、感じる所ばかり攻めて、感じさせた。
やっぱり意識がぼんやりとしてる時と、目覚めてからとでは、反応がまるで違った。
締め付けてくる感じも、しがみついてくるのも。
可愛くてしょうがなくて、オレは、その手を、繫ぐみたいに握った。
もう絶対、離さない、とか。
なんか、そんな風に思っていた気がする。
何が辛いんだか、考え方、病んでて。
自分がそんなんなくせに、人の事は心配したりして。
人と絡むのは好きなくせに、そういう意味で好かれる事は望んでなくて。
オレも人の事は言えないけど。
先輩も、かなり、めんどくさい。
めちゃくちゃに感じさせて、最後は意識が無くなるみたいに眠った先輩の顔を、しばらくずっと見ていた。
後悔はしてない。
むしろ、もう絶対他の奴とはやらせたくない、と、決意しただけな感じ。
――――……でも、好きなのかと聞かれると、いまいち。
まだよく分からないし。
……この人に、好きだなんて言ったら、絶対、拒否られるって事も、ちゃんと分かっている。
そんなつもりは無いって。恋人なんかいらないって。絶対そう言われる。
だから今はオレも、そこを考えなくてもいいだろう。
ただ確実なのは、ものすごく執着は、してるってこと。
だから好きだとかじゃなくて。
心配だからという今までの体でいればいい。
オレが抱けると分かったから、抱いてやる。もう、それでしばらく突き進むことにした。
この人のトラウマ、いつか聞き出して。
それをどうにか、出来るなら、して。
その時、恋人を作るって言うなら――――……良しと思おう。
先輩がその気になった時に、オレがもしそれになりたいなら、迫ればいいし。先輩が他の奴と恋人になりたいと言っても許せる心境なら、それでいいと思えばいい。
先輩がベッドで目覚めるまで。
眠らずに、ずっと、そんな事を考えていた。
「――――……ン……」
車が揺れた時、少し声を出したけど。
髪に触れて撫でてていたら、すぐにまた眠ってしまった。
――――……スヤスヤ眠ってると、ほんと無邪気な顔、してる。
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