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第107話「災難?」*大翔
「――――……」
無邪気な寝顔、見てると。……可哀想かなと思わなくもないんだけど。
この人的には、変な薬を飲まされて意味も分からず、
意識無いまま後輩に迫った挙句、抱かれてしまって。
その相手に、これからオレが抱くからと宣言されるとか。
すげー災難なんだろうなと思う。
意識朦朧としてる間に、なんてことになってしまってるんだろうと、思うよなぁ……。可哀想だなと思わなくもないけど。
――――……まぁ、言う事聞かず、クラブなんか行って、知らねー奴から貰った飲み物なんか飲んで。あんな事になるとか。もう自業自得だし。
そんな事になる可能性がある所に、今までみたいに送り出す事なんか、絶対にできない。そう思ってしまうので、可哀想だとは思うけど、伝えた言葉を覆す気は一切ない。
……ほんとに、カズキのことが好きだったんだろうなと。
それだけは、感じるけど。
何があったか、全部聞きたかったけど――――……。
あんまりきつそうな顔をしたから、最後までは聞けなかった。
まあ、どんな話だったとしたって、結局、好きな奴と付き合って。心変わりで振られる。これにどんな条件が入ったとしても、結局の所はただそれだけなんじゃねえの、フラれるって。
――――……何で、こんな風になっちまうのかな。
しかも、カズキは、先輩に連絡して会いたがってる、みたいだし。
こんなに傷つけて振った相手に、また会いたいって――――……。
いつか万一会ったら、先輩って、どーなんの。
はー。ほんと。
――――……モヤモヤすんなあ……。
その時までに。どうにかできなないかなあ、この人の事。
……触れてる髪の毛が、柔らかい。
なんか、猫みてえ。
可愛い顔して、近寄ってくんのに。急に警戒心剥き出しにして、どっかに逃げようとする。
またため息が漏れる。
「葛城」
「はい?」
「……よく分かんねえけど。迷惑かけるかも」
「――――……どういう意味ですか」
葛城は苦笑い。
「分かんね。――――……なんかこの人普通じゃねえから」
「――――……」
「めんどくさい事ありそうだし……」
はー……。 何でオレ、よりによって、ここに行くかな……。
ため息を付きながら、前髪を掻き上げて顔を上げると。
葛城とまたバックミラー越しで目が合う。
「――――……それでも、関わるんですよね?」
「……ああ。もう決めた」
「じゃあ分かりました。構いませんよ、迷惑も」
「――――……サンキュ」
ため息交じりに礼を言うと。
「大翔さん、ため息はつかない方が良いですよ」
「……幸せが逃げる?」
なんか前にも言われたなと、苦笑い。
「ため息を付いたら、どうしたらいいと伝えたか覚えてますか?」
「――――……ああ。吐いた後に吸って、また吐くんだろ。深呼吸にしちまえば、体にいいとか言ってたよな。……誰が言ってたんだっけ?」
「そういう話をどこかで見かけただけですが……正しいかは知りませんけど、深い呼吸は体にも、心にも良いらしいので」
クスクス笑って、葛城が前に視線を戻す。
「まあとにかく、この人の前では、つかないようにする」
「そうですね」
葛城の声が笑いを含む。
「まあ、前から言ってますが、人の道に外れない限り、味方で居ますよ」
「はは。――――……これ、世間の一般常識からは外れるかもしれねーけど」
「そこらへんの常識なんて、変わりますから」
「……ああ。そっか」
人の道、ねー……。
……大事にしたいだけだから。外れねーか。
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