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第108話「気まずい」*奏斗

「雪谷先輩、起きれる?」 「――――……ン……?」 「もうマンション着くから。一回起きて」 「――――……ん……」  ……四ノ宮の声。  なんか。頭の上から――――……。  ぱち、と目を開けると。上からのぞき込まれていて。  がば、と起き上がって、退ける所まで動いたけど、車の後部座席なので、少し離れただけで、背中をドアにぶつけた。 「……っ???」  ひ、ざまくらされてた…………??  もう今日、夜中からずっと、パニックしかない。 「薬のせいか、ぐったりしてたから、よっかからせただけです」  平気な顔でそう言われて、オレはふと、葛城さんを見てしまった。  なんか、葛城さんもまったく気にせず、普通に平気な顔で運転してて。  もう外は見慣れた風景。マンションの駐車場に車が入った。 「先輩、よく眠れました?」 「あ、うん。ごめん……」 「いえ」  狼狽えてる間に、車が止まって、四ノ宮がドアを開けた。  車の外に降りて、出てきた葛城さんと、向かい合う。 「すみません。……ありがとうございました」 「いえ。今日は、ゆっくりされてくださいね?」 「はい……」  知られてるんだもんな、薬の事とか。  ――――……ああ。ゲイって事とかも、知ってんのかな……。女に薬盛られたとか、思わない……よな??  ……四ノ宮としちゃった事は、知らないよね???  怖いのでもう聞く気はない。  ――――……知らないと思いたいので、このまま別れたい。 「葛城、ありがと」 「はい。大翔さんも、お疲れでしょうし、ゆっくり休まれてくださいね」 「分かった」  少し会話をして、葛城さんが車に乗り込んで、帰って行った。  それを見送ってから、四ノ宮に振り返られる。 「行きましょ」 「うん」  一緒に歩いて、エレベーターで、部屋の階で降りる。  ――――……気まずすぎる。  何話せば、良いんだ。 「先輩」 「え?」 「帰って、楽な格好に着替えたら、オレの部屋に来てください」 「――――……え?」 「分かった?」 「……やだ」  オレは。  1人で考えなきゃいけない事が、死ぬほどあるんだし。無理。 「――――……」  四ノ宮は、ものすごーく、嫌そうな顔でオレを見た。 「1人になりたい気持ちもわかるんだけど、オレはまだ心配なんですよ」 「――――……」 「……オレんちで寝てくれていいから。別に同じ部屋に居なくても、様子見れるとこに居てほしいだけ」 「…………」 「さっきだって、寝ないって言ったそばからぐったり寝ちゃってたし」 「――――……」  返す言葉も無い……。 「……オレは、薬の事が心配なだけ。これ以上、無駄に心配かけないでほしいんだけど。見えないとこで倒れてたらとか、心配したくない」 「――――……」  そんな風に言われてしまうと。  何て断るべきか、よく分からなくなってくる。

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