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第110話◇番外編◆バレンタイン🍫

※本編とは関係のないものとしてお読みください♡♡ 2人の関係性としては、椿先生の資料探し手伝ったあたりで読んで頂けたら♡ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆  大学で、めっちゃくちゃバレンタインのチョコ、もらってしまった。  重い。  チョコが入ってる袋は、友達が持ってたエコバッグを借りた。  肩にかけてたけど。……痛い。  オレ、気持ちに答えられないからお返しできないよ?と言っても、置いて行かれたら、もう受け取るしかなかった。  絶対、去年より増えた……。  そう思いながら、駅からマンションに向かって歩いていたら。  黒い外車が通り過ぎて行って、少し先に停車した。  ――――……あれって……。  そう思った瞬間、中から四ノ宮が現れた。 「あー。先輩……なんか、重そうですね」 「嫌味?」 「いえ。……つか、どういう嫌味ですか?」 「……こんなに貰っても意味がないくせに、っていう……」 「んな事考えてないですけど」  四ノ宮に、ものすごい苦笑いされる。  葛城さんも出てきて、「マンションまで送りますよ」と言われて、最初は遠慮したのだけれど結局 乗せられてしまった。 「……今日四ノ宮、学校に居たよね?」 「はい」 「何で車?」 「ああ……それは……」  四ノ宮がちょっとだけ黙った時に。  葛城さんがあとを引き継いだ。 「大翔さん宛に、ご実家にバレンタインの贈り物が色々届くので、持ってきたついでに、学校でも色々もらって重いと言うので迎えに行ったんです」 「あ、聞いた」 「何をですか?」 「四ノ宮がめっちゃ貰ってたって」 「ああ……断ったんですけど。もう最後面倒で」 「あ、面倒って言った」  ツッコむと、四ノ宮はまた苦笑い。 「女の子の前では言いませんよ」 「はいはい。王子だもんね。んな事いったら、皆、泣いちゃうよ」 「だから王子じゃないって……つか先輩だって、すごいもらってますよね」 「オレのはなんか……本気チョコじゃない気がするけど」 「え?」 「んー、軽いんだよね、貰ってー♡って」 「ふうん?」 「四ノ宮のは、あわよくば付き合いたいとかじゃねえの?」 「先輩のは?」 「うーん…… 可愛いからあげるー!みたいな事も言われたし、なんかほんと軽ーい気が……」 「そんなのばっかりじゃないと思いますけど……ま、いいか。……そーいや先輩」 「ん?」 「多分オレらより、数貰ってるんじゃないかなーと思う人が、ここに居てさ」 「……ん? ……葛城さん??」 「ん――――……葛城、今年、何個もらった?」 「数えてないんですが」 「30? 40? もっと?」 「え。そうなんですか??」 「義理がほとんどです。使用人たちや、かかわりのある店の女の子や……まあ、色々です」  義理。  ……うーん。底がしれない。まあ。モテそうですけど。 「……すごいですね、なんか、葛城さん」  しみじみ言うと、四ノ宮が、ぷっと吹きだして。それから口元押さえてクックッと笑いながら。 「すごいですねって――――…… だってさ、葛城」 「別にすごくはないですよ。義理がほとんどです」  苦笑いで葛城さんが言うけど。  そもそも、そのセリフも、「義理がほとんど」って。  中には本気もいくつか、ってことだもんね。  ……やっぱ、なんかすごい。  なんて、そんな会話をしながら、マンションまで送ってもらい、葛城さんを見送った。 「うわー、お前実家に届く荷物って、何それー。すごい量じゃない?」  「――――……オレと結婚すれば、安泰だからねー」 「うわ。やな感じ、お前」 「だって、そういう意味の贈り物ですから」 「うわーそうなんだ。じゃあ、早くイイ子みつけて宣言したら? もう無駄だからもらいませんって」 「……イイ子いたらそーしてますよ」  苦笑いしあいながら、お互い部屋の鍵を開けて。 「じゃあなー」  と、別れようとしたら。 「先輩」 「え?」 「お茶飲みに来ません?」 「――――……んー。あ、ちょっと待って。これ置いてくる」  オレは自分ちの玄関に荷物を置いてから、外に出て、また鍵をかけた。 「オレもお茶入れようと思ってたから。……いれてもらお」  そう言うと、四ノ宮はクスクス笑って頷いて、自分の部屋に招き入れてくれた。 「何が入ってんの、この贈り物たち」 「さあ――――……見ていいですよ?」 「やだよ、人への贈り物あけるとか」 「どーせ開けんの面倒でしばらくそのままだし」 「じゃあ、チョコっぽいのとちがうのと、分けていってあげるね」 「はあ。もう、好きにしていいよ」 「あー、やだ、なんか貰いすぎて、好意に慣れてる奴って」 「人の事いえないでしょ」 「オレ、そんなんじゃないもん」  そんな会話をしていると。  四ノ宮が、カップを持ってきて、テーブルに置いた。 「――――……コーヒーじゃないの?」 「ん。今日はね」 「なんか甘い匂いがする」 「うん」  テーブルに座って、四ノ宮が淹れてくれたカップを口に近付ける。 「ココア?」 「うん」 「珍しい」  いつもコーヒーだから、ついそんな感想を言うと。 「嫌い?」  そう聞かれて、「ううん、好きだよ、ココア」と言いながら、一口飲む。 「おいしー」 「何でココアか分かります?」 「何でって? 意味あんの?」 「バレンタインだからですよ。一応」 「何でバレンタインだと、ココアなの?」  四ノ宮は、あんまり突っ込まれると嫌なんですけど、と言って苦笑。 「ホットチョコレートって言うでしょ。ココアの事」 「――――……あ、何? お前がオレにチョコくれたってこと?」 「――――……」  何か、ますます嫌そうな顔をされる。 「そこまでのつもりないですよ、ちょっと思いついて、ココア入れただけ」 「ふうん??」 「……言わなきゃよかった」  めちゃくちゃ嫌そうな四ノ宮にクスクス笑ってしまいながら。 「じゃあホワイトデー、楽しみにしてて。何か、返す」 「だから、そういうんじゃないから、いらねーっつの」 「何でチョコくれてキレるんだよー」 「ちょっともう、黙って飲んで貰えますか?」  めっちゃくちゃ、眉を顰められてしまった。 ◇ ◇ ◇ ◇  ――――……と。結局バレンタインは、四ノ宮にはキレられたけど。  今日はホワイトデーなので。  マシュマロ入りのココアを飲ませてやろうと、呼び出したところ(^^)     喜ぶかキレるか。  ま、わかんないけど、まーいいや。     (2022/3/14) 番外編終わり♡

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