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第111話「被害妄想」*奏斗

「――――……はー……」  四ノ宮が作ってくれたうどんを食べ終わったら、どこの部屋が良いか聞かれた。  答えるより早く、横になってた方がいいよね、と言われて。  更に答えるより早く、オレのベッドでもいい?と聞かれた。  もう、うん、と頷く以外にない感じ。  シーツ替えるから待って、と言われたけど。  別に、いい。オレが寝た後で替えれば?と言ったら、それこそ良いけど、とか言われて。  とりあえず、四ノ宮のベッドに寝かされた。 「寝ちゃっていいですよ」  そう言われて。布団に埋められて。  四ノ宮は、出て行った。  ――――……分からない……。  四ノ宮は、何がしたいんだろう……。  なんか。すごい優しく、世話されてしまってる気がする。  ブラックはどこ行った…………。  学校とかで見せる、愛想笑いは、しないから。  ホワイトの。外側の四ノ宮ではないみたい。  でもなんか。  優し過ぎない?   ……怖いよー…………。  あ。そうだ。  ……真斗。呼べばよかった。  オレが、1人じゃなければ、四ノ宮だって心配しないだろうし。  そうすればよかった……。あーでも……。真斗は部活――――……。  その瞬間。  あ、と。突然気が付いた。  ――――……そうだ。  今日真斗、大会だ。 見に行くって言ったのに。  何時にどこだっけ。きっと、真斗から、連絡きてる  スマホ――――……はリビングだ。  ベットから起き上がって、リビングに戻ると、四ノ宮が流しからオレを振り返った。 「どうしました?」 「スマホ……」  昨日から全然見てなかった。  テーブルに置きっぱなしだったスマホを開いて、真斗との画面。  昨日の夕方から何回か。今朝も電話が来てた。  バイブにしてたから全然気づかなかったし、見てる余裕も無かった。 「ごめん、ちょっと電話する」  まだ時間は間に合う。そろそろ家を出る時間かも。  四ノ宮は、オレを見ていたけど、電話をかけ始めたら、流しの洗い物の続きを始めた。  ――――……出ない。  やっぱりもう、出ちゃったのかな。電車かな。  真斗の試合は、11時からだから間に合う。 「あのね、四ノ宮」 「?」  流しの側に行って、四ノ宮を見上げる。 「弟のバスケの大会があって、見に行く約束してたから……」 「今日ですか?」 「うん。今日も明日もあるけど、 負けたらそこで引退だから」 「――――……」  何か言いたげだなーと思った瞬間。  電話が鳴った。 「あ、もしも」 『もしもし、カナっ?』 「あ、真斗――――……ごめん、あの」 『無事なのかよ?』 「うん……無事、だよ?」  ……何も無かった訳じゃないけど。  まあ。なんとか無事。  オレの返事に、真斗は、はーー、と息をついた。   『……もー、何なんだよ、全然連絡つかねーって。昨日はスマホ見ないで寝ちゃったのかと思ったけど、朝も全然既読になんねえし! 倒れてんのかとか色々思って、今からそっち行こうと思ってたんだけど!』 「え。試合は?」 『そっち寄ってもまだギリ間に合うし』 「あ、ごめん、オレ大丈夫だから、来なくていいよ」 『――――……はー。なんかもう、焦った。オレの試合あるの分かってるのに、全然スマホ見ないとか、無いだろ。もう、絶対何かあったんだと思ってさ』  ……確かに。  普通なら、今日の大会の話、昨日の内に連絡してたと思うし。最悪昨日できなくても、朝イチ絶対連絡してただろうし。  真斗が心配してたのも分かる。 「ごめん、心配かけて。大丈夫」  オレがそう言った横で四ノ宮が、食器を洗い終えて、手を拭きながら、オレを、ちらっと見つめた。  大丈夫じゃないだろ。  ……とか思ってそう。  と思うのは……被害妄想な気がするようなしないような。
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