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第112話「宇宙人+母親」*奏斗
「ごめん、真斗。試合には間に合うよう行くから。終わった後とか会える?」
『ミーティングとかもあるし。今日は会えないかも』
「じゃあ差し入れ持ってっても無駄?」
『うん。今日はいいよ』
「分かった。ごめん、心配かけて」
『ほんとだよもう……まあでもよかった』
「ごめんね。じゃ、後で。頑張って」
『ん、頑張る。じゃあね』
電話を切って。――――……ため息。
なんか。
弟に、ものすごく心配させてしまった……。
「先輩」
四ノ宮は自分のスマホを手に取りながら、オレを見た。
「試合の場所どこ? 何時から?」
真斗の連絡に書いてある体育館の名前と時間を言うと、スマホで少し調べて。
「まだ車でも間に合うから。一緒に行く」
「え?」
「車で行って、試合見たら、車で帰ればいいでしょ?」
「車?」
「駐車場に停まってるから。葛城がおいてった車」
「――――……」
葛城さんの車って……。
「外車??」
「じゃないよ。普通の車だから」
ふ、と笑って。四ノ宮が言う。
「着替えて準備して来なよ。準備出来たらチャイム鳴らして」
「……良いの?」
「まだ聞くんですか、それ。――――……オレ、良くなきゃ絶対自分から言わない奴だよ、知ってるでしょ」
「――――……」
うん。まあ。
……そうなんだろうなとは思うんだけど。
「すぐ用意してくる」
「うん」
四ノ宮の部屋を出て、自分の部屋に戻って、着替えや出かける準備を終えた。
……送ってくれる、か。……なんでそこまでしてくれるんだか、分かんないけど。
戸惑いつつも、チャイムを鳴らすと、もうすっかり出かける準備のできた四ノ宮が靴を履いて出てきた。エレベーターで地下まで行く。
「先輩、こっち」
四ノ宮について歩き、鍵を開けてくれた車の助手席に乗りこんだ。
「……免許持ってるんだ、四ノ宮」
「先輩は?」
「持ってるよ。去年とった」
「そっか。――――……あ、寝てて良いよ」
そう言われて、何だか、笑ってしまった。
「何ですか?」
「もうお前、どんだけオレ、寝かせたいの? 寝て良いよってずっと言ってるし」
そう言うと、四ノ宮は一度ため息をついた。
「――――……ほんと、ぐったりしてた先輩見てたから。寝てた方がいいと思うんですけどね。……まあ弟の引退試合とかはもう絶対見たいんだろうから、しょうがないですけど」
「負けなかったらまだ引退しないけどね」
「あぁ。そうですね」
運転しながら、クスクス笑う。
「うまいの? 弟」
「うん。声かけられてプロになるかも考えてたみたいだよ」
「ならないの?」
「ならないんだって。やりたいことがあるらしいよ」
「そうなんだ。先輩の弟、モテそうだよね」
「まあ。モテるらしいけど……」
「……何ですか?」
「すげーモテる奴に言われてもなあ……」
思わずそう言うと、四宮は苦笑い。
「オレ、モテてももう、ホントに関係ないから」
「……何で?」
「しばらくはあんたと居るって決めたから」
「……本気で言ってんの?」
「本気じゃなきゃこんな事言わねーし」
「――――……」
ちら、とオレを見てから、また前を向く。
「一応、男の先輩にこんな事言ってるのがおかしいっつーのは自覚してるけど。……オレの事、気持ち悪いとか思う?」
「え。――――……てか、気持ち悪いって……言うならお前だろ。オレじゃないよ」
「オレが先輩の事気持ち悪いとか言う訳ないし」
「――――……」
……よく分かんないけど。
――――……なんか。その言葉は、嬉しい気がする。
「ん。……なんか、ありがと」
「はは。そこ、礼言うの?」
「……まあ、何となく」
車が止まって、オレが俯いた時四ノ宮の手が伸びてきて、顔を上げさせられる。
「……なに?」
驚いていると、眉を顰める四ノ宮に、ぱ、と離される。
「やっぱ、顔色よくないんだよなー。寝ててほしかったけど」
……それ確認するのに、そんな顔の上げさせ方、する??
もう。お前。
前世、ホストか何かか……。
……現世は宇宙人だし。
もう何なの。
「……大丈夫だってば」
「試合、終わったら即帰るからね」
「……うん」
「オレんちにだからね」
「……うん」
……宇宙人+世話焼きの母親か。
もうなんか。意味わかんなくて、四ノ宮に、苦笑いで頷く。
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