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第113話「穏やか?」*奏斗
体育館について、四ノ宮と一緒にコートの観客席に入る。
一旦席に座ったけど。
「ちょっと待ってて。声かけてくる」
「ん」
立ち上がって、観客席の階段を一番前に降りて、コートを見下ろすと。
たまたますぐ下に居る真斗を発見。
「真斗ー」
ふ、と真斗がオレを振り仰ぐ。
「カナ」
ホッとしたような笑顔。
……なんかまだちょっと心配してたんだな。と分かって、なんかもう心配性の弟に苦笑い。
「大丈夫だから」
「良かった。頑張るから。見てて」
「うん。頑張って」
任せて、みたいな顔の真斗に手を振って、四ノ宮の元に戻って、椅子に座る。
「仲良いですよね」
「ん? ああ。うん。仲、良いよ」
「昔から仲良しなんですか?」
「うん、割とずっと仲良しだったかなー」
「……そんな感じですね」
クスクス笑われる。
まあ。――――……途中から余計、仲良くなったというか。真斗がオレを庇うになったから、余計な気はするけど。
試合がすぐに始まる。
「弟何番? ……ああ、7番?」
「うん。そう」
四ノ宮はつまんないんじゃないかなと思ったら。
なんか意外にも、一緒に応援してくれて。
真斗が3ポイントとか決めると、おーすげー!とオレよりなんか喜んでる気がする。
真斗のチームが優勢で、ハーフタイム。
「……四ノ宮、バスケ好き?」
「ん、好き。つか、弟うまいね」
「あ、そう? ありがと」
ご機嫌で返すと、四ノ宮は、ふ、と笑って、立ち上がった。
「飲み物買ってくる。何が良い?」
「行くよ」
「座ってていいよ。お茶? 冷たいのでいい?」
「……ありがと」
見上げてそう言うと、四ノ宮は、ん、と笑って階段を上っていく。
何となくその姿を見送りながら。
――――……なんか。
四ノ宮。……優しすぎて。……怖い。
いや、怖くはないか……。
優しすぎて。
……すごく、戸惑う?
どうしてたらいいのか。よく分かんないし。
ぼー、としてたら。
ものすごく冷たいものが頬に触れた。
「……っ!!」
びっくりしすぎて声も出ないで振り返ると。
悪戯っぽい顔で四ノ宮が笑ってて。
「びっくり、した……」
言うと、ぷ、と吹き出して。
「――――……なんか、すっげーぼーっとしてるから」
「……あと少しで心臓、とまるとこだけどね……」
「ごめんって。……声も出ないと思わなかった」
クックッと笑いながら、ペットボトルを差し出してくる四ノ宮に、苦笑いしながら、受け取る。
「ありがと……てか、早かったね」
「ん。出てすぐのとこに自販機あったから」
四ノ宮が隣に座るのを見てると。
向こう側にいる女の子達が四ノ宮の事を見てて、何やらキャッキャッ嬉しそう。
――――……ほんとモテるんだろうなあ。こいつ。
まあ。
分かるんだけどねー……。
――――……でもあれだよ。
こいつは、ノンケのくせに、男抱いて、男にキスして、これからオレが抱くとか言っちゃって、その後も何やら、めちゃくちゃ男の世話焼いてくる、前世ホストで、ブラックで宇宙人で、世話焼きお母さんで……。
すごい変なやつだよ?
と、女の子達に言ってみたい。
「先輩、だるいとか無い?」
「……うん。へーき」
「だるかったら、寄っかかってもいいよ」
「――――……冗談だよね?」
「本気だけど」
クスクス笑う四ノ宮は。
はっきり言って、本気なのか冗談なのか、全然分からない。
……冗談だよね??
「――――……別にいつでも寄っかかっていいよ」
「――――……」
マジでなんなのかな……宇宙人さん。
思いながらも。
……なんか、言い方優しいし。からかうなって文句言うような感じでもない。
ぽりぽり頭を掻きながら。
四ノ宮を見上げると。
ふ、と面白そうに笑われて。
――――……ああ、そっか。と思った。
なんか。夜中、話してる時からずっと。なんか不思議だった理由が分かった。
――――……黙ったり。顔しかめたり。良くしてた仏頂面みたいなやつ。
なんか、しないんだ。
……何でだろう?
だから、なんか、こんなに。
――――……ちょっと穏やかに、感じるなのかな。よくわかんねぇけど。
おかげで、なんだか、四ノ宮の言う事、何も断れていない気がする。
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