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第125話「ボードゲーム」*大翔

 早めに夕飯を作ったので、片づけ終わってもまだ20時前。 「まだ眠くないでしょ?何かして遊びませんか?」 「……遊ぶって?」  先輩、ふとオレを見上げる。 「ボードゲームとか?」 「んー。例えば?」 「オセロとかは?」 「いーけど。オレ強いよ?」 「オレも強いと思うけど。葛城とやってたから」 「ああ、なんか葛城さんて強そう」  ソファに座ってた先輩は、クスクス笑いながらオレを見上げる。 「でもオレもさ、すごい強い、友達、とずっとやってたから」 「……ふうん? そいつ強いの?」 「……ん。そういうのすごく得意だった、から」  なにその顔。  しまった、みたいな顔して。  ――――……それってもしかして、カズキ? 「ふうん。そーなんだ」 「……うん」 「じゃあ、勝負します?」 「……いいよ。すごい久しぶりだけど」 「まあオレもそうです。じゃあ待ってて。準備してくる」 「うん」  どっか、オセロのゲームつっこんどいた気がする。  思い当たる所を漁っていたら、少しして見つけた。  テーブルに盤を広げて、石を手に持つ。  独特の触感と、カチャ、という音。  その音を聞きつけたのか、先輩がソファから立ち上がって、テーブルに歩いてきた。 「うわ、なんかすげー懐かしい」 「いつ位にやってたんですか?」 「んー。一番やってたのは中学ん時……かなあ」 「結構ブランクありますね。 楽勝かなー」  オレがそう言うと、先輩はムッとして、そんな簡単に負けないし、とすぐムキになって、オレの目の前の席に座る。 「早くやろうよ」 「はいはい」  完全に臨戦態勢。わくわくして見える。  ――――……単純だなあ。ほんと。  クスクス笑ってしまいながらオレも腰かけて、「白黒どっち?」と聞くと、「どっちでもいーよ」と言う。じゃあオレが黒で、と、ゲーム開始。  最初はあまり考えてない。お互いどんどん進めていく。  中盤あたりから、少し考え始める。  ――――……あぁ、でも。  結構強いのかも。言ってた通り。  目の前の真剣な顔を見つめる。  ――――……こんな顔して。  カズキと居たのか……。  今よりずっと幼い、もっと可愛い顔、してたんだろうな……。  ――――……それを、カズキは、ずっと見てて……。  中学の卒業式に告白したって言ってたっけ。で高2まで付き合ったっけ? 「……ねー、先輩」 「ん?」  ふと顔を上げて、オレを見つめてくる。 「何か賭けません?」 「えー。……何を賭けるかによるけど」 「オレ、先輩の昔の写真が見てみたい。中高の頃の」 「――――……そんなもん見たい?」 「ん」 「いーけど別に。……そんな変わんないっていわれるけどいい? ちょっと幼い位。だって高校なんて2年前だし」 「うん、良い。中学も見せてね」  オレのセリフに、先輩は、「いーけど」と頷いて。それから、変な奴、と呟く。 「じゃあオレが勝ったら? どうする?」 「何かあります?」 「……んー。あ、じゃあ」  ぱ、と笑顔に変わる。 「今日お昼に食べた、ホットサンド。朝食べたい」 「――――……気に入ったの?」 「ん。美味しかった。朝から面倒だろうけど」 「いいよ。作るよ」  ――――……はは。  なんか。  すげー可愛いと、思ってしまった。

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