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第127話「マジで」*大翔

 賭けてから、少し先輩の考える時間が延びた。  真剣なまなざし。  盤を見つめる、その顔をあくまでさりげなく、眺める。  ――――……きれーな、顔。てか、服装によっては、女の子にも見えそう。  ……何でカズキは、この人を振ったのかな。  この人が、もう恋人を作らないとか言うような感じで、だよな?  もともと幼馴染なら、恋人になる時、ある程度の葛藤はあったはず。   乗り越えて、少なくとも1年以上は付き合って、先輩が自分でする必要がない位は、関係を持ってたって事だろ……。  抱いて思ったけど。  ――――……すげえ、抱き心地良いし。エロいし。この顔だし。  どうしても男がだめって奴じゃなかったら、イケてしまう、ような。  幼馴染で友達として好きだった奴と、そういう意味で付き合って、抱いて……で、別れる時に、そんなひどい事、普通するか?  世の中にはどんな奴がいるかわかんねえけど……。  この人が、幼馴染からずっと見てて好きだった人間が、そんな意味の分からないひどい奴な訳がない。とも、思ってしまう。そんな変な奴、好きにならないよな……。 「四ノ宮……寝てる?」  先輩の顔から盤に視線を落として、肘をついたままぼー、としてたら、そんな台詞が聞こえてきた。 「いや、起きてるよ。考えてる」  答えてから。 「つか何で寝てンの、オレ。んな訳ないでしょ」 「だって動かないんだもん」 「真剣なんですよ」  クスクス笑って。 「そんなに中高の頃の写真見たいの?」 「……見たいですね」 「……和希は写ってないよ?」  む、とした顔でオレ見てそう言う。 「写ってるやつは、無くしたから……」 「ああ。別に。そいつが見たかったわけじゃないんで良いですよ」  カズキは、なんでこの人に連絡とりたがっているんだろう。  ……知ってんのかな、この人が、もう恋人作らないとか、そんな事言ってるの……。知らないか。今までの話だと、多分別れてから、連絡は取ってない。  やっと、石を置いてひっくり返すと、先輩が石を持った。 「んー……」  言いながら、じっと盤を見つめている。  ――――……もし、カズキと会ったら。  先輩は、どうするんだろ……。  先輩が石を置いて、オレの番。 「ねー、先輩。カズキって漢字はどう書くの?」 「……平和に希望……何で聞くの?」 「何となく……考えてる時、今カタカナで考えてる気がするから」 「何それ。……つか、考える時、ある?」 「……まあ。考えますよ、たまに」 「――――……考えなくていいよ。どうせ、一生、関係ない奴だよ」 「――――……」 「オレにすら関係ないんだから、四ノ宮には関係ないだろ」  まあ。そうなんだけど。  考えながら、盤を見つめる。 「……ちなみに名字は?」 「……岡本」  ……ふうん。岡本和希、ね。 「……まあ。関係ないんですけど。――――……あんたが、恋人要らないとまで言う理由、教えてくれたら、考えないですよ」  ぱち、と石を置いて、ひっくり返す。 「……はい。先輩の番」  オレのセリフに、困った顔でオレを見てるから、そう言った。 「……まあ、いいから。オセロやりましょ?」 「――――……」  ふー、と息を吐いてから。  先輩がまた視線を落とす。  それからため息。 「――――……お前が勝ったら、いいよ。教える」 「え。……いいの?」  急なセリフに驚いて、顔をあげたら。  先輩は、ふ、と息を吐いて、オレをまっすぐ見つめる。 「――――……本当は言いたくも思い出したくもないけど……」 「――――……」 「……こんなに世話されてて、そんなに気にされてるのも……なんか悪い気もするから。……まあ、別にそんな死ぬほどの事ではないし…… でも、勝ったらな?」 「……了解」  死ぬほど、マジでやろうかな。  なんて思ったら。 「……つか、急にそんな真剣な顔しないでよ。今までなんかニヤニヤしてたくせにー」  はー、とため息と苦笑いの先輩。  ……ニヤニヤなんてしてたつもりないけどな?

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