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第129話「台無し」*大翔

「――――……」  何か。――――……少し、変。さっきから。  少し前までは、オレの嫌な所に置いてきた。  考え方が似てるというか、オレならここに置くという候補のどれかに置いてくる感じ。  賭けてから――――……何だか、そこからずらして置いてくる気がする。  何でそっち? 意味を考えても、よく分からない。  またそっち? ――――……。  しばらく考えて、わざと負けようとしてんのかな。なんて思い当たった。  オレが聞きたがってるから、話してしまおうと思ってんのか。  ――――……まあ。……そーいう事だろうな。  でもムカつく。  きっと話したら――――……。  これで気が済んだろ、そういう事だから分かってね。はい、終わり。  ……そうしようとしてるとしか、思えない。  なんか、ムカつく――――……。  そのムカつきのまま、置いた瞬間。  あれ、という顔で、ちら、とオレの顔を見た。……無視。  一番弱いとこに。置いてみた。  一手で気づくのは、さすがだけど。 「――――……」  オレがそこに置いたんだから、勝つつもりなら、まず置くのは一か所しかない。――――……そう思うとこなのに、先輩はそこを避けた。  オレがわざと置いた所にも戸惑って、つい避けてしまったんだろうけど。  ……さっきまでのは、ちょっとミスったのかな位で、負けようとしてるとはまあバレない程度かもだけど。……今のは、言い訳しようもない。 「――――……」  オレも、普通なら絶対に置かない所に黒い石を置く。  どうすんのかなと思ったら、困った顔を無表情に戻して、中途半端な所に置いた。  さっきまで、すごく良い勝負だったのに、なんか台無し。  負けて全部言って、さあ終わり、みたいなのを感じるから、余計。  ……ムカつくなー……。  そんなにオレが聞きたいならいいよ。  とか。諦めたみたいな。  言いたくて、聞いて欲しくてな訳じゃないだろうし。  言って、オレにもう、踏み込むなって事だよな……。  ――――……ああ、なんか。  そんなんで、この勝負。こんな感じって。  あーなんか。  ……すげえムカつく。  あと、3回ずつ。  くっそ――――……もうこれ。絶対負けてやる。  先を考えた末、どうやったって勝てなくなる所に、 石を置くと。  ……先輩は黙って小さく息を吐いて。仕方なさそうに、白い石を返した。 「オレの負けですね」  オレが言うと、先輩は、ん、と頷いた。  わざと負けようとしたのに、更に負けようとしただろ。なんて言うツッコミは入れられないみたいだな。まー当然だけど。 「……明日、ホットサンド、作ってあげますね」 「ん……」  言いながら、オレが石を集めて、片づけ始めると、先輩は小さく頷いている。 「な、四ノ宮」 「――――……もっかい、やりますか?」 「……」 「何かまた賭けます?」 「――――……」  じっと先輩が見つめてくる。 「……今はやめとく」 「分かりました」  ……まあいいけど。  片付けを続けようと手を伸ばしたら。 「なあ? 四ノ宮?」 「……なんですか?」 「賭けないで、もいっかい、やんない?」 「――――……」  そのセリフに手を止めて、オレは、先輩の顔を見つめた。 「ちょっと最後、考え事してて……。なんか勝ったけど全然すっきりしない。今度はちゃんとするから。やろうよ。――――……いい勝負で、面白かったし」  にっこり、笑う顔を見ていたら。  ――――……あぁ、なんだかな。  ……この人の何を気に入ってんのか、自分でもよく分かんねえんだけど。  やっぱ、なんか、気に入ってる。気がする。

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