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第137話「添い寝から?」*奏斗

「――――……そんな、くっつくなよ」  なるべく密着しないように、少し離れようと藻掻くのだけれど。  なんか、離れられない。  なんなの、こいつ。  思ってたよりももっと、体、デカいような。人の事包むのやめてくんないかな。 「……先輩さ」 「……何」 「――――……嫌じゃないでしょ、これ」 「……やだけど」  そう答えると、後ろで、くす、と笑う。  笑う動きが伝わる位、くっついてる、てことで。 「素直じゃないなー……嫌なら、振りほどくでしょ、先輩」 「――――……これしたら、キスしないって言ったからだし……でもくっつきすぎだから、離れろって……」 「キスだって、絶対嫌だっていえば、オレ、しないですよ?」 「――――……勝手にキスしてたじゃん……」  言うと。……まあそうですけど。でもそこまで、嫌そうに見えてないんで。と、言いながら、また笑う。 「先輩が、オレとこうしてるのが嫌じゃないなら。ここから始めましょーか」  嫌じゃないって、言ってませんけど。  と、ツッコミ入れたいけど。 「なに、ここからって」  そっちの方が気になって聞いてみる。 「添い寝から始めましょ」 「――――……オレがいつ、添い寝してほしいって言った??」 「オレがしたいから」 「――――……」  何か、あれこれ全部、何言ってんだか、よく分からない。  聞きたい事がいっぱいあるんだけど、話すたびに、どんどん増えていって、結局聞けないまま進む。  ……添い寝から始まって、何にどう進むんだ。  ――――……でも、なんか、聞いたら自分が困るような答えしか返ってこなそうだから、それはそれで、聞きたくなくて、オレは、言葉を飲み込んだ。  さっきよりも大分密着して。  ――――……なんか、本当に、包まれてるみたいな感じ。 「……四ノ宮、寝辛いよね、これ。離して」 「全然。……むしろ、抱き心地良くて、良い」 「…………バカなの……?」 「何で、バカなんですか?」  クスクス、笑われる。   「――――……雪谷先輩」 「…………」  ……いっつも、ほぼ、先輩、としか呼ばないのに。  なんで、名字くっつけた。  警戒して、黙ってると案の定。 「――――……キスしていい?」  と聞いてくる。  もう、何なの、お前。 「……あのさ。何回も、言ってるんだけど」 「はい」 「オレ、キス、嫌いなの」 「――――……」 「……寝てた人達とも、よっぽどキスが好きな人としか、しないようにしてたの。大体の人が、キスはちょっと、ていうと、わりと分かってくれる人が多くて、だから、してない――――……」  そこまで、言った時。  肩にかかった手に、ぐい、と後ろを向かされて。  え、と思った瞬間。  キス、された。 「――――……っ」  ――――……また、こいつ……。  だから今、嫌い、って言ってんのに、何聞いてた。  別に。キス位。  そんな大騒ぎして、振りほどく程じゃない、気がする。  知らない人と、ただ快感のために寝るとか、してるんだし。  ……今更キス位で騒いだらおかしいだろ……って、自分のこと、思うん、だけど――――……っ。 「……っはなし――――……」  振り解こうとしたのに、顎を捕らえられて、包まれてた体は、半ば上に、押し乗られて。  柔らかく――――……舌が絡んできた。 「――――……」  ……くっついたら、キスしないって言ったのに。  と、言いたいけど。  ――――……本気で嫌なら。殴ったっていいって思うのに。  何でか。  本気で、振りほどけない。  

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