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第140話「毎朝?」*奏斗
顔を洗って戻ると、なんか、もうほとんど準備されてて。
「すぐ出来るから、座ってて」
「うん」
ほんと、手際が良いというか。何でもできるんだろうなあ、とぼんやりと、思う。その背中を何となく見つめる。
……モテるだろうな。
女に困ったりすること、絶対無いよね。
話すまでは、笑顔嘘っぽいとか。本気で話してんのかなってなんかひっかかって、警戒してたけど。
オレにとっては嘘っぽかった笑顔をしなくなったら。
愛想笑いをしないそのまんまの四ノ宮は、全然嫌じゃなくて。
そのまま居ればいいのに、と思うような感じで。
愛想笑いしたり本心隠したり、無意識なのかよく分かんないけど必要ないのにと、すごく思って。
まあでも、周りの皆は王子と信じて疑ってないから、他の皆は、愛想笑いとは思ってないんだろうけど……。もしかしたら四ノ宮も、どこまでが愛想笑いでどこまでが本気なのかも、実はよく分かってなさそうな。
基本的には、優しいんじゃないのかなと思う。
オレを心配したり、世話したり。
まるでお母さんみたいな時あるし。
まあだから。
――――……素だろうが、素じゃなかろうが。
多分、すごいモテるんだろうなと。素直に思う。
相手に困らない。
困るわけがないと、思う。
――――……で??
オレの相手をするって。
なぜにそんな事になるんだろうか。
やっぱ、全く分からないや。
「ん、お待たせ」
半分に切られたホットサンドが、なんかカフェかなんかで出てきそうな見た目で、目の前に置かれる。
「中身はかえたけどいい? 今日は卵とハムとチーズ」
「……すっごいうまそーなんだけど」
そう言うと、四ノ宮は、ふ、と笑んだ。
「うん。食べていいですよ」
言いながら、四ノ宮もオレの向かいに腰かける。
「いただきまーす」
手を合わせて言ってから、ホットサンドを頬張る。
「――――……」
「……どうです?」
何も言わないオレに、四ノ宮が聞いてくる。
「すっごい美味しい。昨日もそう思ったけど、今日も、おいしー。他にもある? 中身って」
「色々出来ますよ。ていうか、何入れても美味しいと思うけど」
クスクス笑って、四ノ宮が言う。
「例えば??」
「今はスクランブルエッグだけど、目玉焼きとか、卵サンドの具とか、ハムとかベーコン、ウインナーとか、チキンでも良いし、キャベツとかタマネギとか。 味もマヨネーズとかケチャップとか、カレー味とか。アボカドとエビとかも、美味しいし」
次々並べられていく、めっちゃ美味しそうな予感しかしない中身の候補たちに、「全部食べたい」と言うと。
四ノ宮は、クスクス笑って。
「いいよ。毎朝、作ってあげても」
と、普通に答えてくる。
やったー、と言いかけて。
ん? 毎朝? と止まる。
毎朝、四ノ宮と朝ごはん食べるって変だよね。
と、思っていると、四ノ宮がクッと笑い出した。
「色々考えずに、頷けばいーのに」
なんて、すごく楽しそうに笑って言う。
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