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第141話「怖いっつの」*奏斗
「……だって、そんなの変でしょ」
「変じゃないよ、別に。先輩がオレの朝ごはんずっと食べたいなら、ずっと作ってあげるし? それは変な事じゃないでしょ」
「……変でしょ??」
「どーして? あ、じゃあ、材料費は折半にする? それなら、良くないですか?」
「……それでも変じゃない?」
「変じゃないよ。オレは、あんたが美味しそうに食べてんの嬉しいしさ。あんたは、オレのホットサンド食べれて嬉しいでしょ? 材料費一緒に出せば、何の問題もないでしょ? 考えといてよ」
「――――……」
ちょっと首を傾げつつ。
とりあえず、美味しいので、モグモグホットサンドを食べてると。
不意にスマホを手に取った四ノ宮。
ご飯中にスマホ触んなよ、と、母親みたいな事を言うべきか一瞬思いながらも、頬張ってるホットサンドがなくなってからにしようと思った。
ほんと、美味しいな~、なんて思っていた時。
かしゃ、とシャッター音。
……はい???
「何で写真?」
「見て。幸せそう」
画面を向けられて、確かになんかぱっくり噛みついて、幸せそうな自分を確認するけれど。
「いやいや、撮んなよ。消して、そんなの」
「送ってあげるね、先輩のとこ」
クスクス笑われながら、写真を送られてしまったらしい。今手元に無いから確認はしてないけど。送信したっぽい画面を見せられる。
「何でオレ、自分のこんな写真もらわなきゃいけないの」
「まあまあ。こんな幸せそうな顔で食ってんだから、いつでも、作るよってこと。まあ毎日ってのはあれだとしても。食べたくなったら、いつでも言ってよ」
「――――……」
そんな風に言われると。
――――……断り続けるのもなんだかな、と思ってしまうから不思議。
「……なんか。四ノ宮って」
「……ん?」
「詐欺師になれそう」
「今度は詐欺師? ……宇宙人とどっちがマシ?」
そんなこと言いながら、可笑しそうに、笑ってる。
うーん。どっちがマシだろうね? なんて、自分で言った事なのだけど、無責任にそう言って。なんだかおかしくなって笑ってしまいながら、オレは、ホットサンドをまた頬張る。
「ま、いいや。ね、先輩、今日どうしたい?」
「ん?」
急に聞かれて、首を傾げると。
「体平気なら、外出る? ……っても、今日雨なんだよね」
「これからずっと雨なの?」
「そう。つか、土砂降りになるってさ」
「そうなんだ……」
せっかくの日曜なのに。
なんて思っていると、また聞かれる。
「先輩は、雨の日でも出かける人?」
「約束してれば行くけど――――……してないなら、新しく約束はしないかも」
「なるほど……じゃあ、家で良い?」
「――――……オレんちでいいよ」
「何で帰ろ―とすんの」
苦笑いの四ノ宮。
「そろそろ一人になりたいなーとか、無いの?」
「ないですよ。先輩は?」
「――――……」
すぐ聞き返されると思わなかった。え、と考えて。
……一人になりたいとか……。
――――……あれ、不思議と、ない、かも……。
「あ、でもオレ……夕方、クラブに行きたいな……」
「――――……は?」
低い声と視線に。思わずびくっと竦んでしまった。
「ち、がう、って」
慌てて、付け足す。
「リクさんに、迷惑かけたし、心配もかけただろうし……」
「――――……」
「挨拶に行きたいだけ。なるべく早い内に」
そう言うと、まだ少し厳しい視線のまま。
「オレも行きますね」
「ん??」
「オレも、リクさんには助けてもらったし。お礼に」
「あ、うん……」
「それともあわよくば、誰かとって思ってました?」
「っ思ってないよ」
「慌てると、うそじゃなくても 怪しいですよ」
「……っお前の顔が怖いからだよっ」
「は? 失礼な。オレの何が怖いんですか」
「顔全部!」
「……つか、またクラブ行くとか言うからじゃん」
「――――……っそれ位の事でそんな怖い顔しなくてもいいじゃん」
そう言ったら、また厳しい視線を投げつけられる。
「……それ位の事、じゃないよね」
「う。……そう、だけど」
……うう。マジで。怖いっつの。
これ、オレ、そういう意味でクラブに行ったら、すげー怒られそうだな……。
つか。オレがクラブ行く行かないって。
誰かと寝る寝ないって、絶対こいつに、関係ないと思うんですけど。
確かに、金曜は、ほんとにご迷惑かけましたが。
むーー……。
思いながらも、なんか他が優しすぎる分、今、超怖すぎなのでそれ以上は、言えない。
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