138 / 542

第141話「怖いっつの」*奏斗

「……だって、そんなの変でしょ」 「変じゃないよ、別に。先輩がオレの朝ごはんずっと食べたいなら、ずっと作ってあげるし? それは変な事じゃないでしょ」 「……変でしょ??」 「どーして? あ、じゃあ、材料費は折半にする? それなら、良くないですか?」 「……それでも変じゃない?」 「変じゃないよ。オレは、あんたが美味しそうに食べてんの嬉しいしさ。あんたは、オレのホットサンド食べれて嬉しいでしょ? 材料費一緒に出せば、何の問題もないでしょ? 考えといてよ」 「――――……」  ちょっと首を傾げつつ。  とりあえず、美味しいので、モグモグホットサンドを食べてると。  不意にスマホを手に取った四ノ宮。  ご飯中にスマホ触んなよ、と、母親みたいな事を言うべきか一瞬思いながらも、頬張ってるホットサンドがなくなってからにしようと思った。  ほんと、美味しいな~、なんて思っていた時。  かしゃ、とシャッター音。  ……はい??? 「何で写真?」 「見て。幸せそう」  画面を向けられて、確かになんかぱっくり噛みついて、幸せそうな自分を確認するけれど。 「いやいや、撮んなよ。消して、そんなの」 「送ってあげるね、先輩のとこ」  クスクス笑われながら、写真を送られてしまったらしい。今手元に無いから確認はしてないけど。送信したっぽい画面を見せられる。 「何でオレ、自分のこんな写真もらわなきゃいけないの」 「まあまあ。こんな幸せそうな顔で食ってんだから、いつでも、作るよってこと。まあ毎日ってのはあれだとしても。食べたくなったら、いつでも言ってよ」 「――――……」  そんな風に言われると。  ――――……断り続けるのもなんだかな、と思ってしまうから不思議。 「……なんか。四ノ宮って」 「……ん?」 「詐欺師になれそう」 「今度は詐欺師? ……宇宙人とどっちがマシ?」  そんなこと言いながら、可笑しそうに、笑ってる。  うーん。どっちがマシだろうね? なんて、自分で言った事なのだけど、無責任にそう言って。なんだかおかしくなって笑ってしまいながら、オレは、ホットサンドをまた頬張る。 「ま、いいや。ね、先輩、今日どうしたい?」 「ん?」  急に聞かれて、首を傾げると。 「体平気なら、外出る? ……っても、今日雨なんだよね」 「これからずっと雨なの?」 「そう。つか、土砂降りになるってさ」 「そうなんだ……」  せっかくの日曜なのに。  なんて思っていると、また聞かれる。 「先輩は、雨の日でも出かける人?」  「約束してれば行くけど――――……してないなら、新しく約束はしないかも」 「なるほど……じゃあ、家で良い?」 「――――……オレんちでいいよ」 「何で帰ろ―とすんの」  苦笑いの四ノ宮。 「そろそろ一人になりたいなーとか、無いの?」 「ないですよ。先輩は?」 「――――……」  すぐ聞き返されると思わなかった。え、と考えて。  ……一人になりたいとか……。  ――――……あれ、不思議と、ない、かも……。 「あ、でもオレ……夕方、クラブに行きたいな……」 「――――……は?」  低い声と視線に。思わずびくっと竦んでしまった。 「ち、がう、って」  慌てて、付け足す。 「リクさんに、迷惑かけたし、心配もかけただろうし……」 「――――……」 「挨拶に行きたいだけ。なるべく早い内に」  そう言うと、まだ少し厳しい視線のまま。 「オレも行きますね」 「ん??」 「オレも、リクさんには助けてもらったし。お礼に」 「あ、うん……」 「それともあわよくば、誰かとって思ってました?」 「っ思ってないよ」 「慌てると、うそじゃなくても 怪しいですよ」 「……っお前の顔が怖いからだよっ」 「は? 失礼な。オレの何が怖いんですか」 「顔全部!」 「……つか、またクラブ行くとか言うからじゃん」 「――――……っそれ位の事でそんな怖い顔しなくてもいいじゃん」  そう言ったら、また厳しい視線を投げつけられる。 「……それ位の事、じゃないよね」 「う。……そう、だけど」  ……うう。マジで。怖いっつの。  これ、オレ、そういう意味でクラブに行ったら、すげー怒られそうだな……。  つか。オレがクラブ行く行かないって。  誰かと寝る寝ないって、絶対こいつに、関係ないと思うんですけど。  確かに、金曜は、ほんとにご迷惑かけましたが。  むーー……。  思いながらも、なんか他が優しすぎる分、今、超怖すぎなのでそれ以上は、言えない。  

ともだちにシェアしよう!