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第147話「馬鹿宮?」*大翔
めちゃくちゃ甘く、優しくしてあげた。
キスたくさんして。乳首とかも弄りながら、たくさん触れて、イかせてあげて。……先輩は何回イったかな。ちょっとよく覚えてない。
もうほんとは、後ろ触って、オレので、めちゃくちゃに乱したかったけど。
――――……オレに慣れてからって言っちゃったしな。仕方ない。
強張ってるのを抱きたくない。
……と思ったけど。最後の方は、気持ちよすぎたのか、もう、ほんと、トロトロで可愛かったけど。
――――……この人がこんなに気持ち良いの事に弱いの。
一晩だけの相手なのか。それとも、和希のせいなのか。
…………まあどっちにしても、むかつきすぎる事に変わりはないけど。
何度目かの後。かくん、と、力が抜けて、咄嗟に支えた。
意識失ったのか。疲れすぎて、眠ったのか。
とりあえず、体を拭いてあげてから、そのままベットで、枕に頭を沈めさせて寝かせた。オレは片肘ついて、先輩の方を向いたまま、片方の手で先輩のお腹の辺り、撫でている。
「……ん……」
泣いてたからかな、ひく、と震えて小さく声を出して。でもそのまままた眠ってる。
――――……この人がこんなに、きもちいいことに弱いの。きっと、一回限りの相手のせいじゃ、ないよな。
和希としてたせいで、我慢できないんだか、人肌に触れたいんだか。でも執着はしたくないから、一晩。
……何で振った?
――――……こんな、可愛いのに。
こんなに何年も傷ついたままで居なきゃいけない位、傷つけて。
見た事もない相手に、無性に腹が立つ。
会って、その本意を、聞き出してやりたい。
その上会いたがってるって? なんだそれ。
できることならぶん殴ってやりたい。
けどんな事しても、先輩が、癒されるわけじゃないだろうし。
……めんどくせえ。
早く忘れればいいのに。
今、もともと気持ち良いとこじゃなくて。
感じないとこ、感じやすくさせて。やられた事ないような抱き方で。忘れさせればいいのか。
……同じようにやってもだめだよな。
――――……くそ。絶対忘れさせてやる。
…………って。
――――……オレはほんと。……何がしたいんだか。
お腹から、手を上にもってきて、先輩の頬に触れる。
ふ。……すべすべ。
ほんと、すげー可愛いよな。この人。
――――……体も。男とか全然気にならない。
むしろ。先輩のは、ついてても萎えないし。いやむしろエロいし。感じやすくて、可愛すぎる。
何なんだもう。
――――……。
つか。唇。柔らかそう。
――――……なんかオレ。
変態っぽいな……。
一瞬先輩から目を逸らし、自分に眉をひそめていると。
「……――――……?」
少し動いた気配。
ふと顔を見ると、先輩、ぼー、と瞳を開けて、こっちを見た。
オレを見た瞬間に、起きてた時の記憶がよみがえったみたいで。
手の甲を口元にあてて。かあっと真っ赤になった。
「先輩?」
「……っ何で、あんな、すんの! もーお前、ほんと、やだ!!」
起き上がった先輩が、後ろ手に触れた枕を、オレに向けて、ぶん投げてきた。片手で咄嗟に押さえたら。
「おさえんな! 当たれよ!」
何やら叫んで暴れてる先輩の腕を取って、引き寄せる。
背中に手を回して、抱き寄せると。
「もう、ほんと、やだ……」
「あー…………ん、ごめんね」
よしよし、と撫でる。
「撫でんな、|馬鹿宮《ばかみや》……」
何だ馬鹿宮って…。
ぷ、と笑ってしまいながら。
「大丈夫? 急に意識なくなってちょっとびっくりした」
「……っっ急にっていうか、お前のせいじゃん! もう、あたま、真っ白すぎて、気が遠くなっただけだし!! 馬鹿宮!! もうずっとそう呼ぶから!!」
「――――……はあ……」
頭真っ白で気が遠くなった、だって。
気持ちよすぎて? ……つか、可愛すぎる。
「じゃあオレ、奏斗て呼んでいい? 呼び捨てしたい」
「は? やだよ」
「馬鹿宮でもいいから」
「はあ??」
「オレ、奏斗って呼びたいな」
「やだ。オレ、名前呼ばれたくない」
「名前嫌いなの?」
「――――……別に」
多分オレの腕から逃げないのは。真っ赤な顔、見られたくないからなんだろうな。ほんとは、逃げたいんだろうけど。
そう思うと、ちょっと可笑しい。
「弟は、カナって呼んでたよね」
「……カナは、もっと嫌だ」
はー。頑な。
――――……それも和希絡みか?
「奏斗。いいじゃん。呼びやすい」
「嫌だってば。呼んだら口きかない」
「――――……呼んでいいって言うまで……色々してあげてもいいけどね」
そう言ったら、数秒無言。
さっきの事思い出したのか、また、真っ赤になって、きっと、睨んでくる。
「もう、お前嫌い、帰る、オレ、もう離せ、馬鹿宮」
「――――……はいはい」
すっぽり抱き込んて、ぎゅ、と抱き締めると。
――――……もう諦めたように動かなくなるのも、なんか、可愛い。
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