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第150話「寄りかかって」*大翔
――――……言うのやめたけど。
ほんと。
……何だろうな。何でこんなに可愛いと思ってるんだ、オレ。
「奏斗って呼んでいい?」
「やだ」
「何で」
「年下じゃん」
「一個しか違わないじゃん」
「てか、学校でも呼び捨てるつもり? 変じゃん」
「そう? 仲良しだと思われる位だよ、きっと」
「――――……やだってば」
むー、と腕をつっぱって、オレの抱き締めてる腕の中から、逃れようとしてる。……つかその動きが、何か可愛いんだけど。何なんだ、あんた。
「……奏斗」
普通に呼んでみた。
すると、ものすっごい、めちゃくちゃ、眉を寄せて、ものすごい、オレから引いていこうとする。その腕を掴んで、引き寄せる。
「奏斗?」
「――――……っ」
腕の中に入った先輩の耳元で、囁いたら。
びくう!!っと震えて。離れた時には、真っ赤になってた。
「耳、弱すぎでしょ……」
「……っわざとやったくせに!! もー、お前、マジで嫌い!!!」
囁かれた耳に手を当てて、何だか知らないが、ごしごし拭いている。
「拭かなくて良くない?」
拭いたって意味ないでしょ、と、笑ってしまうと、先輩はめちゃくちゃ怒った顔をして。
「なんかくすぐったいのが残ってんだよ!! 馬鹿宮!!」
もーほんと、やだ!!
ぶつぶつずーっと言いながら、ずりずりとオレから離れて、ベッドの端で、壁に背を付いて座る。
ふ、と笑ってしまいながら。
オレも場所を変えて、先輩の隣に、壁に背を付いて座った。
「…………」
先輩は、また膝を立てて、そこに肘をついて、顎をのせる。
「そうやって、膝立てて座るの、癖?」
「え?」
「……よくやってるから」
なんか、膝抱えて、ちっちゃく座る感じ。
……別に。悪いわけじゃないんだけど。
なんか。寂しそうに見えて、すげー気になる。
オレがそういう目で、見てるからかな――――……。
「……そう?」
「ソファの上でもそうやって座るじゃん」
「……そうだっけ? ……じゃあ、癖かも?」
思い出してもよく分からない、といった顔で首を傾げて、オレを見る。
「……家でもそうやって座ってる?」
「えー?? 分かんない。どーして? 気になる?」
「いや。……良くそうやってるなーって、思うだけ」
寂しそうに見える、とは、言えない。
「変なこと、気になるんだな?」
先輩は、そんな事、笑いながら言ってるけど。
そんな事言いながら、また横で、膝抱えて座られると。
「あのさー。ちょっと抵抗、しないでね。変なこと、しないから」
「?」
先輩の腕、掴んで、引き寄せながら、さっきみたいに、オレの脚の間に引っ張っててきて、オレに寄りかからせる。
オレは膝立てておいて、先輩を後ろから、包むみたいな感じ。
「――――……四ノ宮さぁ……これ、変なことじゃない、って、言う?」
先輩は、もはや諦めたようなため息を付きながら、オレを振り返って見上げてくる。
「別にやらしい事してる訳じゃないし。寄りかからせてるだけじゃん」
「――――……」
抱き締めたら退かれるかなと思って、手は、自分の膝に置いておく。
「……膝抱えて座るなら、よりかかってて、いいよ」
「――――……変なの。四ノ宮」
なんか苦笑いの先輩。
「……そんなにオレとくっついてたいの?」
「――――……そーかもね」
思わずクスッと笑ってしまいながら、そう答えると。
「ほんと変なの……まーいいや…… もー疲れたし。今だけな?」
「いつでも寄っかかってていいよ」
「――――……ほんとうに、心底、意味が分からない」
そんな風にしみじみ言われて、苦笑が浮かぶけど。
でもやっぱり、丸まって座られるより、全然、良い。
もーこれでいこ。
ずっとやってれば、慣れるだろ。
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