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第154話「目立つ」*奏斗

 オレが助けられた時の事は、全く記憶にないので、んー、と考えていると。 「リクさんは警備を呼んで、誰も出すなって声荒げてるし。めちゃくちゃ珍しいんですよ、リクさんがそんな風なの。まあすぐ見つけて確保してからはすぐいつも通りでしたけど。でもって、その後来たお兄さんは、もう確保されてんの知ってるはずなのに、見るまで安心できなかったんでしょうねー。もう、ほんと蒼白って感じで」 「……そう、なんですか……」 「そうなんですよ」  彼はにっこり笑って、オレを見つめた。 「ほんと良かったです、ご無事で。はい、どうぞ。こちらオマケです」  頼んでない物まで渡され、おしぼりも持たされて、四ノ宮とリクさんの所に戻る。 「リクさん、ご馳走様です」  渡されたお皿をテーブルに置きながらそう言うと。 「うん。いいよ」  クス、と笑ってリクさんはオレにそう言って。  それから、ちら、と四ノ宮を見た。 「まあ、そんな感じかな。それじゃね。またね、四ノ宮くん、ユキくん」 「あ、はい、また」  リクさんが離れていく。オレは四ノ宮を何となく見上げる。  ……蒼白?  …………って。  そんな風になるイメージは全く無いなあ。  いつでも、余裕で、落ち着いてそう。 「……何ですか?」 「――――……いや。何でもない。 ……つか、今、機嫌悪い?」 「別に?」  絶対嘘だ。  素知らぬ顔してても、なんか分かる。 「……何? 言ってよ」 「――――……リクさんに、またって」 「……」  さっきのオレの返事? 四ノ宮を見上げると。 「またここに来る気?」 「――――……あ。そういう意味か……」  ちょっと不機嫌な理由、やっと分かった。  ていうか。リクさんがまたねって言ったからだし。……ただの、挨拶じゃん。  そう思うんだけれど。  んー。……ちょっと、怒ってる……? 「……しぱらく来ないからさ」 「しばらく?」  何でこんな事、四ノ宮に断るんだろうと思いながら、とりあえずそう言ったのに、また、その部分でひっかかるみたいで、聞き返される。 「……とりあえず、しばらくは」  そう言ったら、ふー、とため息をつかれたけど。 「……まあ来させないからいっか」  ニヤ、と笑われて。じゃあ最初からムッとしなきゃいいじゃんと、逆に少しムッとするオレなのだけど。  でもなんか、今はもう何も言わなくていいやと思って、口を閉ざす。  置いたおしぼりで手を拭きながら、「飲んだら帰りましょ」と四ノ宮が言う。 「ん。――――……な、リクさんと何話してたの?」 「んー。……世間話?」 「ふうん……?」    四ノ宮は、ぱく、とスナックを口に入れる。 「あ、うまい」 「あ、そう?」 「ん。はい」  ぱく、と口に入れられる。  ……食べさせられそうになって、つい、口を開けてしまった。  これは。  傍から見たら。あーんてしながら、イチャイチャしてるように見えてしまうんじゃないだろうか。  つか。  ……目立つんだよ、こいつと、二人で居ると。  オレが一人で来てもわりと視線は感じるから、だからよく、リクさんのとこに行って、気づかない振りをしたりもしてるんだけど。  声を掛けられるよりは、良さそうな人に自分から声を掛けたいし。  ……ていうか。  とにかく、オレが一人で居る時より、めちゃくちゃ視線を感じる。 「おいしい?」  めちゃくちゃ目立つイケメンが、人の口におやつ、食べさせて。  にっこり笑ってきてたりすると。  ……ほんとに、目立ってる気がする。 「……お前、目立つから、変な事しないでよ……」  こそ、と囁くと。 「――――……つか、さっきから、奏斗の事、ちらちら見てる奴らが居るから、オレはわざとやってんだけど」 「……わざとやってたの?」 「わざとだよ。女の子ならまだいいけど」  少し眉を寄せて、ちら、と周囲を見回す。 「だから、早く飲んで帰ろうっつってんの」 「――――……」  ……つーか。絶対オレに飛んできてる視線より、四ノ宮に飛んでる方が、多いと思うんですけど。

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