151 / 542
第154話「目立つ」*奏斗
オレが助けられた時の事は、全く記憶にないので、んー、と考えていると。
「リクさんは警備を呼んで、誰も出すなって声荒げてるし。めちゃくちゃ珍しいんですよ、リクさんがそんな風なの。まあすぐ見つけて確保してからはすぐいつも通りでしたけど。でもって、その後来たお兄さんは、もう確保されてんの知ってるはずなのに、見るまで安心できなかったんでしょうねー。もう、ほんと蒼白って感じで」
「……そう、なんですか……」
「そうなんですよ」
彼はにっこり笑って、オレを見つめた。
「ほんと良かったです、ご無事で。はい、どうぞ。こちらオマケです」
頼んでない物まで渡され、おしぼりも持たされて、四ノ宮とリクさんの所に戻る。
「リクさん、ご馳走様です」
渡されたお皿をテーブルに置きながらそう言うと。
「うん。いいよ」
クス、と笑ってリクさんはオレにそう言って。
それから、ちら、と四ノ宮を見た。
「まあ、そんな感じかな。それじゃね。またね、四ノ宮くん、ユキくん」
「あ、はい、また」
リクさんが離れていく。オレは四ノ宮を何となく見上げる。
……蒼白?
…………って。
そんな風になるイメージは全く無いなあ。
いつでも、余裕で、落ち着いてそう。
「……何ですか?」
「――――……いや。何でもない。 ……つか、今、機嫌悪い?」
「別に?」
絶対嘘だ。
素知らぬ顔してても、なんか分かる。
「……何? 言ってよ」
「――――……リクさんに、またって」
「……」
さっきのオレの返事? 四ノ宮を見上げると。
「またここに来る気?」
「――――……あ。そういう意味か……」
ちょっと不機嫌な理由、やっと分かった。
ていうか。リクさんがまたねって言ったからだし。……ただの、挨拶じゃん。
そう思うんだけれど。
んー。……ちょっと、怒ってる……?
「……しぱらく来ないからさ」
「しばらく?」
何でこんな事、四ノ宮に断るんだろうと思いながら、とりあえずそう言ったのに、また、その部分でひっかかるみたいで、聞き返される。
「……とりあえず、しばらくは」
そう言ったら、ふー、とため息をつかれたけど。
「……まあ来させないからいっか」
ニヤ、と笑われて。じゃあ最初からムッとしなきゃいいじゃんと、逆に少しムッとするオレなのだけど。
でもなんか、今はもう何も言わなくていいやと思って、口を閉ざす。
置いたおしぼりで手を拭きながら、「飲んだら帰りましょ」と四ノ宮が言う。
「ん。――――……な、リクさんと何話してたの?」
「んー。……世間話?」
「ふうん……?」
四ノ宮は、ぱく、とスナックを口に入れる。
「あ、うまい」
「あ、そう?」
「ん。はい」
ぱく、と口に入れられる。
……食べさせられそうになって、つい、口を開けてしまった。
これは。
傍から見たら。あーんてしながら、イチャイチャしてるように見えてしまうんじゃないだろうか。
つか。
……目立つんだよ、こいつと、二人で居ると。
オレが一人で来てもわりと視線は感じるから、だからよく、リクさんのとこに行って、気づかない振りをしたりもしてるんだけど。
声を掛けられるよりは、良さそうな人に自分から声を掛けたいし。
……ていうか。
とにかく、オレが一人で居る時より、めちゃくちゃ視線を感じる。
「おいしい?」
めちゃくちゃ目立つイケメンが、人の口におやつ、食べさせて。
にっこり笑ってきてたりすると。
……ほんとに、目立ってる気がする。
「……お前、目立つから、変な事しないでよ……」
こそ、と囁くと。
「――――……つか、さっきから、奏斗の事、ちらちら見てる奴らが居るから、オレはわざとやってんだけど」
「……わざとやってたの?」
「わざとだよ。女の子ならまだいいけど」
少し眉を寄せて、ちら、と周囲を見回す。
「だから、早く飲んで帰ろうっつってんの」
「――――……」
……つーか。絶対オレに飛んできてる視線より、四ノ宮に飛んでる方が、多いと思うんですけど。
ともだちにシェアしよう!