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第159話「変な気分」*奏斗

 とりあえず、あったまろう。  なんとなくそう思って、お風呂にお湯を張った。  洗い終えて、お湯につかる。  あったかい。 ――――……ほっとする。  そこでふ、と、気づいた。  自分の、座り方。  ――――……膝、抱えて座ってた。  ああ。……これ。  確かに良くやってるかも。  ――――……なんか。四ノ宮、気にしてたな。 「――――……」  寄りかかってもいい、とか。言ってた。  ……変なやつ。  オレの座り方なんて。どうでもいいのに。  ぽちゃん、とお湯の音。    誰かひとりと。  親密になんかなりたくない。しかも、体の関係あり、でなんて。  もともと――――……流されやすい。と思う。  優しくしてくれる、好きと言ってくれる、大事にしてくれる。  抱き合う。  そういうのが好きだし。もちろん、それが好きな相手だったら、だけど。  でも、そんなに好きでなくても、抱かれてたら、愛着が沸いてしまいそうで。  だから、どんなに相性良くても、一回、て決めて。  ――――……もう、誰かにのめりこむとか、したくない。  四ノ宮が、うさんくさいと気づいたオレを特別視してるのはなんとなく分かる。今まで誰も気づかなかったのに、オレが気づいたから。なんか、多分、特別だって思ってるんだろうなあって。  ……でも、これから面倒がらずに素を出してけば、あいつのこと、ほんとに好きになる奴も出てくるだろうし。  変な奴だけど、でも……良い奴だと思うし。スペックがいいのは、うさんくさいなって時から認める位だったし。  これからだって、すごいモテるだろうし。  ――――……まあ。オレも。  モテるって。周りは皆思ってるんだろうけど。  オレは女の子にモテても困るし。  ――――……男と、恋愛する気は、無いし。  実情は全然、モテて幸せとかじゃない。  でも別に、めちゃくちゃ迫られるとかでなければ、好かれるのは嬉しいし。  恋愛しなければいいだけで、友達と遊ぶのは、楽しいし。  皆と楽しく、過ごせばいいだけ。  四ノ宮はもともと女の子がそういう対象なんだし。  何でオレを抱く気になったのか、よく分かんないけど。多分。特別視してる事からの、好意、からだ。……オレが、見知らぬ男に抱かれるのは心配だっていうのも、多分、そういう好意、から。  家が隣で。妙に一気に近づいちゃって。  すげー心配になっちゃったのかな……。  あとは多分。……もともと面倒見、良い奴なんだろうなぁ。なんか、世話、甲斐甲斐しい位だし。  お湯をすくって、顔につける。  ずるずるそのまますべって、肩と顎までお湯につける。 「――――……もう、家行くのやめよ……」  近すぎるから。余計にあんなに心配させて、あんなことになっちゃったんだ。家の行き来はもうやめて、ゼミはしょうがないけど。  もともと、隣に居るの、知らなかった位に、会わなかった奴なんだ。  接点は、ゼミだけ。  それでいいや。  ――――……感謝は、してる。  なんか色々、すごく。  でもだからこそ。  もう関わって、迷惑とかかけたくないし。  ――――……オレに恋人が出来るまで付き合うとか。  全然、意味わかんない事も、させたくないし。   なんか色々病んでる、とか思って。協定結んだし、オレに色々話してる内に素が出せるようになればいいなあとか思ったけど。  四ノ宮は、なんか大丈夫そう。  むしろ、最初心配してたのに、心配ばっかりされて、世話掛けてんのは、オレだし。  ぶくぶく、沈みながら。  なんだか。  そんな事考えてると。  なんか。  ちょっと呆れたような。四ノ宮の笑顔、浮かんできて。  どうしようもなく――――……変な気分になるのは。  なんなんだろ。

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