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第164話「悶々」*奏斗

「……四ノ宮、やめ――――……」 「――――……ん?……」  少し離した唇をまた塞がれる。四ノ宮の手が、裾から入ってきて、腹筋から胸をなぞって、乳首を掠めた。 「…っ!」  ここ何日かですごく触られまくってる気がする。少しの刺激で、熱くなる。 「……っだから、もう……やめ……」  ゆっくり、唇を離すと。四ノ宮は、ぺろと自分の唇を舐める。 「もーほんと……気持ちよさそうな顔、するね……」  そのまま、耳に、舌が這う。 「――――……奏斗、で呼ぶ。二人の時だけで良いから。いい?」  耳に舌が入ってきて、 刺激される。 「ひゃ……っ」  頭の中に響く水音に、ぎゅうっと瞳を閉じる。  四ノ宮の手が。あろうことか。ズボンの上から、下半身に触れた。 「――――……っっや、だってば!!」  その手を止めると。  四ノ宮は、ふ、と笑って。 「じゃあ――――……今はやめるね」  そう言って、オレを離した。 「帰ったら、寝る準備する。来たかったら、チャイム鳴らして」 「行かないし!!」 「はいはい。来たかったらでいいですけど」  クスクス笑う四ノ宮は、靴を履いて、オレを振り返った。  あしらわれてるみたいで、すごくムカつく。 「じゃあね、奏斗」 「……呼ぶなって、言ってるじゃん」 「外では、呼ばないから」 「――――……っ」  どこでも呼ぶなって言ってるのに、意味が分からない。 「……四ノ宮は、オレと何がしたいの?」 「何がって?」 「……オレと、今してるみたいな、そんな事しても、四ノ宮に良い事ないじゃん」 「――――……」 「遊ぶんなら、女の子が良いに決まってる。オレはこないだみたいにぼーっとしないで、ちゃんと……もっと、ちゃんと気を付けるから。大丈夫だから」  四ノ宮は、じっとオレを見つめてる。 「……この週末の事、ありがとうって、ほんとに思ってる」 「――――……」 「これからも、オレ、コーヒーとか飲みたいなら淹れるし。話したい時は聞くし……これから、ゼミは結構大変になるしさ」 「――――……」 「ちゃんと考えてよ。こういうのも、無しにしようよ。今まで通りが良いと思う」  そう言うと、四ノ宮は、はー、とおおげなため息。 「分かった。――――……とにかく考えてくる」 「うん。そーして」 「――――……今オレ、触ったでしょ」 「……え?」 「……こんな中途じゃ嫌なら――――……オレのとこ来ていいよ」 「っもう平気だし!! バカ!! もー帰れ!」  かあっと赤くなってしまって、それがムカついて叫ぶ。 「近所迷惑だよ、奏斗」 「奏斗って呼ぶな! もう!!」  四ノ宮は、クスクス笑いながら、しー、と指を立てつつ。 「一応考えるから、奏斗も、オレに触られたいか考えて」 「早く帰れ」  もう疲れて、ボソッと告げると。  笑いながら四ノ宮は出て行った。  マジ意味、分かんない。  ムカつきながら、鍵を閉めた。  そのままため息。もうそのまま洗面台で歯を磨いて、トイレを済ませた。  ……もー、なんで、体、触んだよ。  ――――……今はもう反応してないけど。  思い出すと、ぞく、としたものが背筋、走る。  昼間、あんなにされたのに。  ――――……しばらく、んなことしたくなんないと思う位に。  ……もー、なんなんだよ、もー。  ……四ノ宮、マジで、やだ。  ――――……絶対、行くもんか。あいつのとこなんか。  そもそも行く理由 無いし!  そのままベッドに潜り込む。  しばらく、目をつむって、何も考えず、眠ろうとする。  ――――……眠れない。  枕を抱き締めて、何だか延々、ずーっと、悶々と考えながら。  大分遅くなってから、眠りについた。

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