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第167話「オレのに?」*大翔

 葛城との電話を切って、スマホを置いたら、急に眠くなってきた。  よく考えたら、ホテルではほとんど寝なかったし、奏斗が居る間も、結構起きてたっけ。  ――――……どーせ、奏斗からは来ないだろうから、寝るか。  そう思うのだけれど。  リクさんと、葛城の言葉。  それから、奏斗の言葉。  全部、立場も気持ちも色々違うだろうに、言ってることは、同じ。  もともとノーマルなオレが。  奏斗と何がしたいんだっつー、そういうことだ。  どうせその内、女に戻って、奏斗と居なくなるなら。  いますぐ離れろ。  そういうこと。 「――――……」  額に当てていた手を少し離して、じっと手のひらを見つめる。  この週末、この手で、めちゃくちゃ触った。  食べさせて、飲ませて、よっかからせて。  腕の中に。ずっと近くに。  ――――……誰かに、こんな風にしたいと思ったことが初めてで。  自分でも確かに、戸惑ってる。  何がしたいかって言われたら。もう答えなんて、決まってる。  和希のことなんか完全に忘れさせて、あんな一晩だけなんて絶対やめさせる。震えたり泣きそうになったり、自分にすら触れないとか。キスも出来ないとか。マジで全部忘れさせて――――……オレの。  そこまで考えて、ふと止まる。  ――――……オレの?  …………オレの、に――――……したい?……とか。 「――――……」  ……ちょっとよく分かんねえけど。  今まで生きてきて会った中で、一番、危なっかしくて、それをどうでもいいと、思えない相手。     まだ頭ん中、「和希」ばっかりで。  オレのことなんか、そん中にないかも。だから無理やり入り込むつもりだし。  ――――……あーやっぱり今日、一人にしなきゃ良かった。  くっそ……。もー次から絶対、帰ってほしいなら帰る、なんて言わねーぞ。  あの人が元気になって、他に好きな人が出来るなら離れるのもいいし。  ――――……それが無理なら、オレがずっと居てもいいって思ってるし。構い倒してれば、寂しくはないだろうし、一人で丸まることも出来ねえだろうし。  散々聞かれたけど、この先どうするかなんて、今は関係ない。  抱くと決めた時点で、かなり覚悟したんだ。  明日も居るし、明後日も居るし。きっとその後も、そのまま居る。  それでいい気がする。  意味が分からないとしても、ずっと居れば、居る事に慣れるだろうし。  つか、マジ見合いなんてしねーからな。  さっき電話を切った際、念を押したのだけれど、葛城は苦笑いしてるのみ。  結婚なんかしねーし。  ――――……奏斗が一人でいる限り。  ……とか。  ――――……これは重すぎるから、絶対、口には出さないようにしようなんて思いながら、オレはスマホを手にした。 『明日の朝、7時に、また違うホットサンド作るから、絶対来て。おやすみ』  そう入れて送信してから、しばらく見るけれど、既読はつかない。  ――――……眠れてるんならいいけど。  ……小さくなってなければいいけど。  昨日はここで抱いてたのに。  そんな風に思いながら、眠りについた。

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