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第186話「ほっとけない」*大翔

「――――……?」  ふと気づいたら、腕の中に奏斗が居なくて、目を開くと。  すぐ隣に、奏斗が座っていた。  まだ静かだし、暗いから、夜中だろうと思う。 「……奏斗?」  座ってる奏斗の腕を引く。 「あ――――……ごめん。動いたから、起きちゃった?」  苦笑いを含んだ声。 「どうかした?」 「……何となく目が覚めただけ」 「――――……寝る?」 「――――……」  少しの間、沈黙。 「……四ノ宮」 「はい?」 「――――……お前って……何で、オレに、こんな風にすんの」 「何でって……」 「……隣だから?」 「――――……隣だからなんて理由で、オレがすると思います?」 「……思わないけど……じゃあ、協定、結んだから?」 「協定――――……」  その言葉……すでに遠い遠い向こうに、いってたけど。 「……まあ。それもある、かも……?」 「――――……かもって……」  奏斗は、苦笑い。 「絡んできた経緯とか、関係とか……色々複雑にあったからこうなってるとは思う、けど……」 「――――……うん」 「一言で言うなら――――……オレ、あんたを、ほっとけないから」 「――――……」  不思議そうに、じっとオレを見つめてくる。 「……でもオレ、かよわい女の子とかじゃないし。その言葉も、女の子相手なら分かるんだけど……」 「――――……」  はー、とため息をついてしまう。  ……あんたの前で、つかないって、決めてんのに。 「……奏斗」  頬に触れる。  ……頬に触れる位じゃ、もう、特に何も言わない。 「――――……女だとか、男だとか、関係ないんだけど」 「――――……」 「オレは、奏斗を、放っておきたくねえの。……分かる?」 「――――……」 「他の誰を放っといても、奏斗だけは、無理」 「――――……わ、かんない……なんでだよ」 「……何でとか言われても、分かんないよ。こんな風に思うの初めてだし……」 「――――……」 「……つか、か弱い女の子とか。マジで、どーでもいいんだけど」  はー、とまたため息……をつきそうになって、すう、と大きく吸い込んだ。 「……オレ、本気で言ってるよ。あんたがいいなら、ずっと側に居るって」 「――――……ほんとに……意味わかんない。ずっとって、何だよ」  奏斗は、オレを見てから、ふい、と顔を退いて、頬から手を外す。  ちょっとカチンときて。  追いかけて、頬を捕らえた。 「――――……その内、意味、分かってよ」  ゆっくり、近づいて――――……唇、寄せて。  奏斗が、ちょっと困った顔をして、固まった瞬間。  苦笑いで、止まる。 「――――……キス、するよ?」 「……っや、だよ、聞くなよ!」 「……嫌なら、突き飛ばして」  そう言って、そのまま、顔を寄せて――――……。  突き飛ばされないのを良い事に。  キスを、重ねた。

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