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第188話「可愛すぎ」*大翔

 朝。不意に目が覚めて、奏斗の方を見ると。  奏斗が、枕に顔を埋めて、何やら妙な動きをしている所だった。  ……何してンの、この人?  声は出さず、見ていると、枕にぐりぐり顔をこすりつけて。  そのまま、ぎゅうっと枕に抱き付いて、固まった。 「――――……」  自然と、瞬きが多くなってしまう。  ほんとになにしてるんだろう、と思いながら、苦笑。  そっと手を伸ばして、奏斗の背中に手を触れさせた。  瞬間。びくん!と大きく震えて。それから、嫌そうにオレに顔を向けてくる。  クッと笑うのを止められない。 「朝から何してんの?……面白ぇんだけど」 「……っいつから」 「んー……なんか顔ぐりぐりしだした時から?」 「………………っ」  また枕に埋まる。 「奏斗? マジ、何なの?」  クスクス笑いながら、背中をポンポンしていたら。 「もう、オレにキスしないで」  それだけ言って、また埋まって、枕にしがみついてる。 「は?……嫌だけど。――――……何で?」  朝からムッとして、理由を聞いたら。 「……のうの……」 「え?」 「昨日、の」 「昨日の、何?」 「……っあんな寝方」  あんな寝方?  そう思って、すぐ、ああ。キスしながら落ちた寝方ってこと? 「もう二度とやだ」 「――――……」  はー。  昨日はあんなに可愛く、キスされて、すやすや寝てたくせに。  なにその感じ。頑なに枕抱いて、全然こっち見ねえし。  ムカつくなー。せめて顔見て言えよ。  そう思って、オレは奏斗に触れて、くるん、とひっくり返した。  そうくるとは思っていなかったのか、容易にひっくり返された奏斗は、びっくりした顔で、オレを見上げるけど。 「――――……」  なんか、顔、赤い。 「――――……何で、赤いの?」  その頬に触れて、逃げられないようにして、真正面から見つめる。 「あんな寝方、やだし」  なんかめちゃくちゃ恥ずかしそうに、視線を逸らされる。 「――――……」  めちゃくちゃキスされながら、寝ちゃったのが、朝起きたらすげー恥ずかしかったって。そういうことかな?  んで、静かに、枕に、ぐりぐりなってたの?  クッと笑いがこみあげてきた。  あ、やば。  と思った瞬間。  枕を投げつけられた。 「お前が、恥ずかしいことしたんじゃん!! 笑うなよ!!」  枕をどかしてる隙にあっという間にベッドを降りた奏斗は、猛ダッシュで部屋を出て、消えて行った。 「はは――――……なにそれ」  ……可愛すぎなんだけど。  照れるとか。  なんか、顔洗ってる音がする。  どう我慢しても、笑ってしまいながら、ゆっくり立ち上がると。  オレも部屋を出た。

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