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第190話「やっぱり」*大翔
いろいろ考えながら、食べていると、ふ、と奏斗がオレを見た。
「……あのさ」
「ん?」
ちょっと困ったみたいな顔してんのは、何だろう。そう思っていると。
「……ゼミの合宿さ」
「ん。ああ。来週の?」
「昨日小太郎にどうやって行くか聞かれたんだけど」
「何で行くかってこと? 車とか?」
「……お前は、一年と行く、よな?」
……しばし、無言。
一年と行くよな?
……別に何も決めてないが。
一年で行かなかったら何だって言うんだ。って。あれ?
「んーと……誘ってる?」
「……は?」
でっかい瞳が、さらに見開かれて、オレを見る。
それは無視して、更に聞いた。
「オレと行きたいってことでいい?」
「そんなこと言ってないだろ。なんとなく、確認しただけ、一応……」
早口で、そんなことを言ってから。
「オレは、小太郎達と行くから」
「――――……」
ふーん……と黙ってから。
「――――……それってさ、奏斗は、まだ、先輩達で行くとは、答えてこなかったってこと?」
「……っ一応、聞いただけ」
「オレが、奏斗と行きたいって言うかと思った?」
思わず、ニヤ、と笑ってしまいながらそう言うと、奏斗は、また少し赤くなった。
「ち、がうし! そういうんじゃないし!」
なんか焦ってるのが、やたら可愛い。
別に、そんな反応しなくてもいいのに。
オレの最近の行動を見てれば、奏斗が「一応」「先に」オレに聞いておいた方がいいって思うのも、当たり前な気がする。
勝手に先輩達で行くとか決めてきたら、オレが一緒に行きたかったのにとか言いそうって、奏斗が思ったって不思議じゃないことを、オレは日々奏斗に言ってるんだから。
「いいよ、一緒に行こ。車出しますよ」
「だから、違うってば。良いから、一年と行けよ」
「オレ達が隣同士だってこと、今日のゼミの時、言いましょうか。そしたら、家から一緒に行けるからって言えますよね」
「言わなくていいよ」
「何で?」
「なんかすげー仲良しだと思われたら、嫌だろ」
「――――……」
仲良しだと思われたら、嫌だ。
って言うんじゃなくて。
仲良しだと思われたら、嫌だろ。
って。オレが、かよ。
「何で? オレがそんなの、嫌だと思う訳ないんですけど?」
そう言いながら、もしかしてとは、思ったけれど。
「でも、もし……ゲイがバレた時のためにさ。そんなに隣同士で超仲良しとかは、言わない方がいいと思って」
「――――……」
もしかして、そんな感じのことかなとは思ったけど。
オレは奏斗の頬に手を伸ばして、両頬を摘まむと。
「そんなの全然平気」
「――――……」
少しの間黙って、奏斗はじっとオレを見ていたけど。
苦笑い。
「……人の目気にしてきたくせに」
「別に。面倒くさいから、適当に合わせてきただけ。人の目を気にしてた訳じゃないし。……そんなの気にして、奏斗と居なくなるとか無い」
「――――……あ、そ……」
ふい、と視線を逸らして、頬の手を離される。
何も言わず、パンを食べてから。
「――――……よく分かんない、お前」
ため息をついて、それ以上は何も言わず、モグモグ食べてる。
――――……やっぱ、なんか……可愛い。
ふ、と笑ってしまうと。少し睨まれた。
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