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第191話「気にしすぎ」*大翔

「じゃあオレ、着替えて準備するから」  朝食を食べ終えて、片付けも終えたところで、時計を見ながら奏斗が言った。 「一限からでしょ?」 「うん、そう」 「オレもそうだから、一緒に行こ」  そう言うと、奏斗はオレを見て、ちょっと困った顔で。 「――――……別でもいい?」  そう言った。 「どうしてですか?」 「――――……なんか、ほんとにずっと居る気がしない?」 「嫌ですか?」  直球で聞いてみると、奏斗は、オレを見て、少し口を閉ざしてから。 「――――……家ならまだしも……毎朝一緒に学校行くとかさ……」  そんな風に言う。  家ならまだいいけど、外だとダメって。  ……自然にそんなような内容の言葉が出るところに、イラっとした気持ちが、沸き起こる。 「――――……あのさあ」  ぐい、と腕を掴んで、オレの方に引き寄せて、近くから見下ろした。 「オレは気にしないって言ってるでしょうが」 「――――……じゃあさ」  ムッとした顔で、オレを見上げながら言ってから、少し視線を逸らして、黙る。 「じゃあ、何?」  促すと、奏斗はまたオレを見上げて、半分睨んでるみたいな顔をした。 「……オレと変な噂が立ったらさ。お前が彼女欲しいなって時に、その噂が邪魔になるかもしんないけど。いいの?」 「いいよ」  即答すると、奏斗は困った顔でオレを見る。  だから。  ――――……彼女欲しいとか、全然思わないって、言ってんのに。  ほんっと分かんねえな……。 「……大体、朝、一緒に登校した位でそんな噂立たないって。オレもあんたも、モテるって有名なんだからさ。ここ二人がくっつくなんて、普通の奴は、思わないよ」 「――――……」 「気にしすぎなんだよ、奏斗。誰もそんなに見てないから」  そう言ったら、奏斗は少し黙ってから、はーーー、と、ため息をついた。 「……確かに、女子にモテモテな、外ではすごい優しそうな王子だもんね。ゲイとか思われないか……」  その言葉の、「外ではすごい」のところにものすごい力を込めて言った奏斗に苦笑い。 「ん? なんか、オレに言いたいことありますか?」 「……いっぱいあるし、いつも色々言ってると思うけど」  言いながら、オレから離れて歩き出そうとしてる奏斗の前から腕を回して止めて、そのままぐいっと引き戻した。  オレと向かい合って、むー、と眉を寄せてる奏斗を見下ろして。 「あんま可愛くないと――――……可愛くさせるけど」 「っやだやだ、離せ、学校行く準備――――……」  何かを察知してるのか藻掻いてるのをうまく押さえて、顎を捕らえた。  退こうとしてる顔をそのまま固定させて、唇を重ねる。 「……や……」  開いた唇に、ゆっくり、舌、触れさせて。  柔らかく、舌先に、触れた。  ぎゅ、と瞳をつむるのが。  ――――……やっぱり、なんだか、可愛い。  

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