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第198話「疑問」*大翔
「――――……江川」
「ん?」
「……奏斗に隠そうと思ったけど――――……やっぱ、お前に話聞いたこと言っとくから。隠さなくていい」
「あ、了解。あ、でも、オレが好きとかそういう話は無しな?」
「言うか、そんなこと」
……つか、そんな余計なこと伝えるか。
心の中で思いながら。あ、と突然気づく。
「――――……大事なこと聞いてなかった」
「ん? 何何?」
「和希が、奏斗に会いたがってるって――――……何だと思う?」
それを聞くと、江川は、ああ、それね……と苦笑い。
「……予想でしかないよ?」
「それで、いい」
即答すると、江川は、ん、と頷いてから。
「……後悔、してんじゃないかなって、思う」
「――――……」
後悔。
――――……まあ……想定内。
「本当に仲良かったんだよね、あの二人。……オレは、カナ先輩が好きだったけど、なんか嫉妬するのもアホらしい位、ぴったりで。絶対別れないと思っててさ……だから思わず、いいなあとか言っちゃったんだけど――――…… カズ先輩、もともとは多分ノンケの人だから、そういうので、悩んでたんじゃないかなって、今は思う」
「――――……後悔してたとして……会ったら、どーすんだよ」
「よりを戻したいっていうことじゃないの?」
「――――……」
「分かんないけどさ。もしかしたら謝りたいってだけかもしれないし。聞いたわけじゃないしさ。でも、カズ先輩が、カナ先輩を探してて、連絡先知りたがってたのは、確かだから」
……ふざけんな。の、一言しか、出てこない。
あんなに臆病になる位、傷つけて泣かせて。
後悔したから、また付き合いたいとか。
…………でも、
――――……奏斗は、どうしたいんだろう。
と。頭をよぎる疑問。
もしも、和希が、後悔しまくって、それで奏斗を好きだと言ったら。
今度こそ、離れないからと、和希が言ったら。
――――……奏斗は……?
「なあ、四ノ宮、聞いてる?」
江川の声に、は、と突然気付く。
全然聞いてなかった。
「……何?」
「だから、そろそろ時間だからオレ行くけど」
「ああ。……悪かったな、急に」
何となくそう思って、一応口にした言葉に、江川はオレをマジマジと見て、笑う。
「――――……いいよ、別に。なんか面白いし」
「面白い、言いすぎだろ」
「だって面白いんだもん……もし何か話あったら、カナ先輩に連絡先聞いて」
……あるか? 今後。
もう聞きたいこと聞いたし。
そう思いながらも、とりあえず頷くと、江川は笑顔で「じゃあな」と言って、早足で離れて行った。時計を見ると確かにギリギリで、オレも早足で教室に向かって歩き出した。
――――……さっきの疑問が、消えない。
もし。
よりを戻したいと言われたら。
奏斗は、戻すのか。
……戻すかもな。
――――……もともと、すげえ好きだった奴なんだもんな……。
一回離れても、好きだったとか、言われたら。
――――……戻すか。
……江川の話じゃ、悪い奴とかじゃなくて……いい奴みたいだし。
今みたいに一夜限りとかで抱かれたり。
変な奴と付き合うとか言われるより。マシか、とは思うが。
――――……何か。
……ムカつく。
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