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第201話「全部やだ」*奏斗
四ノ宮に全部話してしまって。
あろうことかキスされながら、ほんとに寝落ちするというめちゃくちゃ恥ずかしいことをしてしまった。
朝もキスされて。あろうことか、ゼミの前も、トイレでキス、されて。
もう思い切りひっぱたいてやろうかと思うのに、何故か、出来なかった。
ゼミが始まって、椿先生がゼミ合宿の話をしている。
途中、先生に四ノ宮がツッコまれていた。よく分かんないけど。
なんだか笑っててムカつくので、プリントを顔の前に持ってきて、四ノ宮の視線を遮る。
大体、なんであんなとこで、キス、されなきゃいけないんだ。
学校だし。誰かきたらどーやって、個室出るんだよ。もう。
はー……ほんと。
勘弁してよ……。
――――……四ノ宮の、キスの仕方が……。
気のせい、かもしれないけど。誰にでもそうなのかもしれないし。
……とにかく、なんか、すごい優しくて。
――――……だからか、よく分かんないけど、一瞬、そのまま許してしまいそうになる。
――――……意味ないのに。
四ノ宮とどれだけキスしたって。
オレ達が付き合うわけじゃないし。そんなつもりもない。
最近、四ノ宮と居ることが多いけど、オレが一人で生きてくって決めてることに何の変わりもない。
今は、四ノ宮がオレに、クラブに一人で行くなとか、うるさいくらい止めてるけど。したたいなら自分が抱く、なんて、あんな制止をずっとする訳ないし。
なんか言ってたよなぁ……。この年で結婚がとか……。
葛城さんみたいな執事も居て、なんか色々大変そうな家っぽいし。オレに構ってるのとかは、飽きるまでだろうって思うし。
何か、四ノ宮の言ってることを聞いていると、ずっと居るとか。
……じいさんになっても付き合うとか。
ほんと意味の分からないこと、ずっと言ってて、たまに謎すぎて困るけど。
オレは――――……今までと一緒。
そういう欲は、どこかで発散すればいいし。
誰かひとりに一生懸命恋するなんて、したくない。
……四ノ宮に、依存する、みたいなのも、嫌だって思う。
そういうことしないなら、友達というか、先輩と後輩で、お隣さんで。
普通に仲良くするのはありだと思ってる。
……オレが、先週の金曜、アホなことしたせいで、なぜか四ノ宮がオレを世話するみたいな感じになっちゃってるけど。
もともとは、オレ、四ノ宮と協定結ぼうって言ってたんだよな……。
四ノ宮はオレにだけ本音言うって言ってて。オレも、四ノ宮にだけは、ゲイだってこと隠さない。ていうかもう隠せないし。お互い、何か相談があったら、話そうって。
協定――――……。
なんか今は、あの金曜のせいで。
オレに変な薬飲ませたバカ二人のせいで……四ノ宮とあんなことになっちゃって。……そのせいで今なんか、変な感じだけど……。
冷静に考えて、例えば、四ノ宮と恋人になるとかなら。まっすぐ向かい合うけど、オレは恋人はいらないし。四ノ宮だって、元はゲイじゃない、色々複雑そうな超お金持ちのおぼっちゃんで。
……少し考えただけでも、四ノ宮側から、無理。
で、オレも、もちろん、無理。
――――……だから。
この変な感じを、続けるわけにはいかない。
抱かれたいなら、オレが、とか。
――――……何言ってんだろ、ほんとに、あいつ。
あー……もう、あの金曜さえなければ。
こんなことにはなってなかったと思うのに。
くっそー、時間を戻せるなら、あの合コンに……。
まっすぐ家に帰るのにー!!
あまりにも自然にキスされて。
なんかそれが普通になりそうで、すごく嫌だ。
……キス。
――――……多分。オレ。キスは好きなんだと思う。
前は、めちゃくちゃしてたし……。
一度限りの相手とは、キスはしたくなくて、ずっと忘れてたけど。四ノ宮とすんのは、なぜだか嫌じゃなくて。
……なんか。
それもこれも、あれも、全部やだ。
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