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第203話「先帰る」*奏斗

 もー、マジ何なの。離れろよ。  四ノ宮を離させようと、藻掻き始めた時。 「相川先輩、あの……オレ、考えてたんですけど」 「んん?」  オレを引きずり寄せたままで、小太郎に向けて話し出す四ノ宮に、小太郎もちょっと首を傾げている。 「オレ達、超ご近所さんだったことが、こないだ判明したんですけど」 「え。ユキと四ノ宮が?」 「そう。それで、合宿も、オレ達は自分ちから、高速乗っちゃった方が楽そうなんで……それでも良いですか?」 「あー、ユキんち、高速出入口近いんだっけ」  近いっても、十五分位はあるし、別に皆と一緒に行けないことはないしっ。  言おうと思うのだけれど、四ノ宮に邪魔されて。 「そうなんですよね。オレの学年、家はちょっと離れてるで……」 「じゃあ、別にそれでも良いけど。そしたら、一、二年で近い同士で待ち合わせ場所考えようかなぁ」 「そうしてもらえると助かります」  にこ、と笑って、四ノ宮が小太郎に向けて、締めの一言。  そっか、オッケー、と言いながら、良い奴で素直すぎる小太郎が頷いてる。 「誰と誰が近いんだっけー?」  とか言いながら、席を移動して、向こうに行ってしまった。  オレはと言えば。  まだ近いままの四ノ宮を思い切り引きはがす。 「……もー、なんなの」 「――――……言うって言ったじゃん。家近いって」 「……言ったっけ?」 「うん。言ったよ。あんたはちょっと拒否ってたけど」  ……あぁ。そういえばそんな話、したな……。  拒否ったじゃんか、あんまり仲良いってしとかないほうがいいって、言ったじゃんか、オレ。  すぐ近くに先生や先輩たちもいるこの状況では、言いたい文句も言えない。  どうしてくれようか考えていると。 「そろそろお開きにしようか?」  先生がそう言って、はーい、と皆が返す。  会計を呼んで、多分先生がかなり多めに出してくれて、皆、二千でいいよー、とか。いつもそんな感じ。  皆のお金を集めるのも一年がやることが多いから、付近のお金を四ノ宮も集め始める。  オレは、速攻お金を渡して、外に出た。 「――――……」  ……このままだと、また四ノ宮と家まで一緒か……。  もうむかつくから、先帰っちゃお。 「小太郎、オレ、ちょっと用事があるから、先に帰るー!」 「えっ? ユキ?」 「先生に言っといてー!」 「ちょっ……気を付けて帰れよー」  頷いて別れて、小走りで進むけど。  ……気を付けて帰れって、また言われた。いっつも小太郎、言う。お前もな、て返すと、ユキは特にって言われる。  オレが、男に狙われそうとか思うのかなぁって思うけど、まあそこは地雷に触れるみたいな話になるので、聞いたことはないけど。  五分位したところで、着信。  やだなあ、と思いながら見ると、案の定、四ノ宮。  うう。出たくない……。

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