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第204話「結局一緒に」*奏斗

 出ないと、鳴り続けそう……。  すごい、こんなに電話に出るのが嫌なことって有るかなあと思いながら、通話ボタンを押すと。 「……もしもし」 『あのさぁ』 「……」 『子供じゃないんだから、逃げんなよ。今どこらへん?』  呆れたような物言いに。頭の中で、カッチーンという音が鳴る。  …………うっわー。ムカつく……。  子供じゃないし!  子供だったらそもそもいろんなこと悩んでないし、お前と変なことにもなんないし、逃げることだって、してないし!  むぐぐぐぐ、ムカつくー! 「っオレ、もう先帰るから。あと、今から真斗と電話するから、邪魔しないで」 『ちょ――――……』  ぶち。切ってすぐ、真斗へと電話を掛ける。四ノ宮からの着信が鳴らないように。 『はい。もしもし、カナ?』 「うん。真斗、ごめん、ゼミの食事会で、遅くなっちゃった」 『まだ外なの? 気を付けて帰れよ?』  ……弟にまでなぜ、心配されるのだろうか。 「大丈夫だよ。オレ男だってば。……明日、見に行くから」 『あ、そうだ、カナ』 「ん?」 『さっき、大会の参加チーム見てたんだけどさ』 「うん?」 『カナの高校も勝ち残っててさ。ただ同じ時間に別のコートだから、試合が始まっちゃえば会わないと思うんだけど』 「あ、そうなんだ……」  ――――……皆、頑張ってるのか。  ……オレが三年の時に、一年だった皆だもんな……。ほんとなら応援、してあげたいけど。 「……見つからないようにちょっと変装してく」 『変装?』 「……ちょっと深めの帽子かぶって、 顔あんま見えないようにしてくから」 『……まあ、いいけど。あの人は来ないの?』 「あの人って?」 『こないだの――――……えーっと……あ。四ノ宮さん』 「……なんで、四ノ宮?」 『え。……なんかあの人でっかいから、カナ、隠れられていいんじゃないかなって思っただけ』  真斗はクスクス笑いながら、そんなことを言う。 「こないだはたまたま居ただけ。明日は一人で行く」 『そうなんだ』 「大丈夫、通路とかはささーっと通り過ぎて、コート入って試合見たら、速攻帰るから」  言った瞬間。  背後から急に気配がして。 「つか、オレ、行くし」 「げ」  姿を認識した瞬間、オレから漏れた一言に、四ノ宮は、苦笑い。 「何、げって。失礼」 「……っ」  ……もっと早く歩けば良かった。 「弟? 電話貸して?」 「は?」 『あ、カナ、かわって』 「は?」  四ノ宮の発言に眉をひそめてるのに、それが聞こえたらしい真斗のセリフにも、顔が険しくなってしまう。  しかもそれも、四ノ宮に聞こえてるし。 「ほら、弟も、かわってだって」 「……っ」  もう、ほんと、なんなわけ。 「あ、もしもし? 真斗くん?」 『あ、四ノ宮さん? 真斗でいいですよ』  すぐ近くなので、声、聞こえてくるけど。  ……真斗、何言ってんの、呼び捨てとか許可すんなー、仲良くなるつもりなのか。真斗にしては、こんなの、珍しすぎる。何なの。 「真斗でいいの?」  四ノ宮はなんだか面白そうな顔で、オレを見ながらニヤニヤしてるし。 『明日、来てくれますか?』 「うん。行くつもりだった」 『……変なお願いなんですけど、なるべくカナを、隠しながら歩いてもらえませんか』 「どういう意味?」 『会わせたくない人達が、居る可能性があるんです』  そこまで聞いたけど、もう、四ノ宮から電話を奪い返す。  何でだか道に立ち止まって話していたことに気づいて、歩き始める。  四ノ宮も後ろからついてくる。 「真斗、なんで変なこと、頼むんだよ。もう。大丈夫だよ、別に会ったからって、何がどうってわけでもないんだし」 『……カズくん、来るかもしれないじゃん。平気なの?』 「……別にもう、平気だし」 『――――……四ノ宮さんと応援きてね』 「なんで四ノ宮とな訳」  隣に居る四ノ宮を見ながらため息をついてしまう。 「明日も、試合見たら勝手に帰るから気にしないで」 『うん。多分そんなに時間はないからそれでいい。また泊りに行くから。じゃあね』 「うん」  電話を切ってから。隣の四ノ宮を見上げながら。 「あのさぁ……」 「ん?」 「……なんで追いかけてくるんだよ」  そう言うと、四ノ宮は、別に?と笑う。 「普通に歩いてきたら、奏斗が電話しながらのろのろ歩いてたから、追いついただけ」 「別にのろのろしてないし。普通に歩いてたし」  そう言うと。 「まあ……少しは早歩きしたけど」  四ノ宮は楽しそうに笑って、オレを見つめてくる。  ……結局。一緒に歩いてるし。  もう。  ほんとに、もう……。

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