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第206話「結局」*奏斗

 湯舟で、めちゃくちゃ、考えた。  ムカつくから、四ノ宮のところに行かなくて済む方法を、めちゃくちゃ。  でもやっぱり、大地に余計なこと聞いたり、変にボロ出すのは嫌だし。  ……なんか大地って変に鋭いんだよな。余計なこと、晒したくない。  そうなると、聞ける相手は、もはや何がバレても大した問題にならなそうな位に諸々バレてる、四ノ宮しか居ないという結論。  ムカつくけど、結局それしかない……。  ふやけそうな位に湯舟につかって、それから家を出てきた。  スマホと鍵だけ持って、人んち来るとかさ。普通ないよな。くそ。  チャイムを鳴らすと、四ノ宮がすぐ出てきて、いらっしゃい、と笑顔。  ムカつくが、しょうがない。 「もう寝れる?」 「――――……話聞いたら、帰る」 「ふーん」  面白そうに笑われるのがまたムカつく……。 「何か飲みますか?」 「水飲んできたから良い」  なんだかもはや慣れたと感じる空間に入って、ソファに腰かけた。 「話、聞く」  そう言って、四ノ宮を見つめると、四ノ宮は、ん、と笑いながら、ソファに腰かけた。広いソファなので密着はしないけど。こんな広いのに、ソファで一緒に座らなくてもいいのにとも思うのだけれど……それより、まず、話。 「何で、大地と、ごはん?」 「んー。奏斗と会った後に、偶然購買で会って……気が付いたら、誘ってた感じ」 「――――……」  ……とっさに返事が出てこない。  何言ってるんだろう。  気が付いたら、誘ってたって。  意味が分からない。  何、気が付いたらって。 「……四ノ宮って……何言ってんのか自分で分かってる?」  そう言うと、四ノ宮は苦笑いを浮かべながら。 「まあ、自分でも、何であいつと向かい合って座ってるのか不思議に思ってたから……言いたいことは分かる」 「――――……マジで、何なの」 「……まあ聞きたいことがあったんだよ」 「何を?」 「――――……あんたの元カレのこと」 「――――……」 「どんな奴か、あんた以外から、聞きたかった」  オレ、今、一生懸命、分かろうと思って、聞いてはいるのだけれど。  ……さっぱり分からない。 「なんで……そんなの、聞きたいの?」 「さあ……今更会いたいとか、どういうつもりなんだろうとか……奏斗以外の奴から、そいつのこと、聞きたかったんだと思う」 「――――……」  ……和希のことが聞きたくて、大地と、話したのか……。  …………って。マジで謎だけど。 「大地……変に思って、なかった?」 「うーん……カナ先輩とどういう関係? とは聞かれたけど……」 「……何て、答えたの」  寝ちゃったとか……そういうの、言ってないよな?  冷や汗をかきそうな気分で聞くと。 「んー……ちょっとした事故で先輩の秘密知って、そこから秘密を共有してる、とだけ、言っといた。詳しいことは、何も言ってない」 「――――……」  ……事故。  ……まあ確かに、事故、だな……。なんか色々事故ってる気がするけど。 「……四ノ宮ってさ」 「うん?」 「……他人のそういうの、あれこれ聞きたい奴……じゃないよな?」 「うん。違いますね。むしろ、全然聞きたくない奴ですね、オレ」 「――――……」  じゃあ何で、そんなオレのこと、聞くんだ。  つか、オレ以外にまで。ていうか、知らない大地をランチに誘ってまで……。 「お前が、誘ったの? ランチ」 「はい」 「なんて言って……?」 「時間あるなら、聞きたいことがあるからって」 「大地、すぐいいって?」 「んー……オレと? って聞いてたかも」  苦笑いの四ノ宮に、そりゃそうだろうなと、呆れてしまう。  ほんと何がしたいのかな、こいつ。 「……大地は、なんて?」 「んー……まあ、モテる人だったってのは、分かった、かな……」 「――――……」  まあ。それは、そうだったけど……。 「……でもまあ……そんなに大した情報はなかったような……」  四ノ宮はそんな風に言って、笑う。  そっか……。まあ、大地が知ってることは……よく考えたら、昨日話したあたりと……部活で関わってた和希のことくらいか。  じゃあ、そんなに被害は、ないのかな……。  緊張して、姿勢よく座ってたんだけど、ふ、と力が抜けて。  なんとなく、足をソファの上に置いて、膝を抱えて座りなおす。

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