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第208話「キスされながら」*奏斗

「……ていうかさぁ……何考えてんのか、ほんとに分かんない、四ノ宮」 「まあ。自分でもちょっとそう思いますけど」  言いながら、四ノ宮が少し動いて――――……。   「え?」  腕を取られて、ぐいっと引かれて、そのままくるっと反転させられて、四ノ宮によっかかる形で、四ノ宮の腕の中に、埋まる。 「――――……だから、そのかっこして座るなら、こっち」  もう、ほんとに何なんだ、と思ってしまうのだけれど。 「……まあ、なんか、江川にも、変わってるねとか言われたかも」  普通にそんな風に話し出す四ノ宮に抵抗するタイミングを奪われて。  あと……少しこの体勢に慣れてきてる自分。  ……まずいとは思うのだけど……。  どうせ抵抗しても、抜けられないのも、なんかいつものことになってて。  「……どこでご飯、食べたの?」  つい普通にそう質問すると、四ノ宮は、あー、と少し笑って。 「誰にも聞かれたくなかったし、邪魔されたくなかったんで……購買の先にカフェがあるの知ってます?」 「知ってる。……え、あそこで、お前ら二人で、ランチしたの?」  振り返って、その顔を見上げてしまう。 「そう」 「……似合わない」  思わず、苦笑いを浮かべると。 「まあ、そうですね。――――……奏斗となら似合う? 今度いこっか」  と、言われる。 「男同士で行く店じゃないよね」 「……じゃあ、奏斗は、女の子と行った?」 「えーと……あ、そーだった。女子三人と、オレで行った気がする」 「何で?」 「休講になった時、たまたま近くに居たんだったと思うけど」 「――――……なるほど」 「……オレ、友達の女子は結構居るから」 「完全に友達?」 「そーだよ。……知ってるだろ」 「まぁ、あんたの方はね。知ってるけど」 「……向こうが、たとえどう思ってたって……友達にしか、ならない」  そう言うと、四ノ宮は、少し黙った。 「――――……あのさ、奏斗」 「?」  声の感じが変わった気がして、オレが四ノ宮を振り返ると。 「……もし、万一、なんだけど」 「うん」 「――――……和希が、さ」 「――――……」 「……もしも、万が一……」  そのまま、珍しく、言い淀んでるみたいで、黙る四ノ宮を見上げてると。 「……もう一度、付き合いたいって――――……言われたら」 「……は?」 「……言われたら、どうする?」 「――――……何が聞きたいの? ある訳ないじゃん」  何が言いたいんだろう。  今までも散々、意味の分からないこと、聞かれたり話したりしてきたけど。  ……今までで、一番、意味が分からないかも。 「……男同士ってことが、嫌だったから、ああなったんだよ?」  オレがそう言うと、四ノ宮は、少し黙ってから。 「それでも、やっぱりあんたが好きで、って言ってきたら?」 「――――……無いよ」  何となく視線をそらして、俯く。 「もう一度付き合っても……オレ、いつ捨てられるんだろうって……思いながら、居ると思う……」  そう言うと、四ノ宮はまた黙って、返事をせず。  少ししてから、オレの頬に触れた。  そのまま、振り返らされて。  めちゃくちゃ至近距離で、見つめられて。 「――――……」  触れられた瞬間から、そうなるかなと、思ってしまった予想に違わず。  そっと、唇が触れてきた。  分かってたのに。  何でオレ、避けないんだろうって。  キスされながら、思った。  

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