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第212話「迷惑?」*奏斗

 朝食を一緒に食べた後、四ノ宮の車で体育館に到着した。  十時半の試合で、今は十時。  シートベルトを外しながら「ありがと」と伝える。 「コートはどこだか分かってる?」 「こないだと同じとこだって」 「じゃあすぐ出なくてもいいか。試合間際になったら、コートに直行しよ」 「……うん」  うろうろしてると、もしかしたら来ているかもしれない、誰かに会う可能性が大きいもんな……。  四ノ宮の言葉に頷きながらも、少し、ため息をつきたい気分に陥る。  ――――……ほんとは……皆に会いたいんだけど。  でも……。和希には、まだ会いたくないし……。 「あ。そうだ。ゼミの合宿は、オレと行くってので、いいよね?」 「――――……お前が昨日そう言っちゃったんじゃんか」  そう返したら、四ノ宮は、オレを見て、少し苦笑する。 「別にさぁ。どうしても嫌だったら、遠くても相川先輩とかと行きたいとか、言えるでしょ?」 「――――……そうだけど……」  あんまり頑なに嫌だとか言うのも、なんか変な気がするし。 「ていうかさ。四ノ宮は、一年の仲間と行かなくていいの?」 「……そっちと行きたかったら、オレが奏斗にこんなこと言ってるわけ、ないでしょ?」  ……それはまあ、そうなんだろうけど……。  その意味が……本当に、よく分からないんだよね。 「一応聞くんだけど、今日、奏斗の知り合いが居たら、オレはどうしたら良い?」 「――――……?」 「急いでるから早くって、引っ張って帰ればいい? それとも、再会して話してるのを、とりあえず見てればいい?」 「――――……」 「江川みたいな奴と会うだけなら、別にそこまでじゃない? それとも、誰に会っても急いで帰る?」  四ノ宮のまっすぐな視線と質問に、しばらく、考えて。 「……引っ張って、帰ってくれる?」  話してる間に、連絡先、て話になったら、困るし。 「和希が引っ越した後に入ってきた知らない学年だから、和希は来ないと思うんだけど……オレの学年の友達が来てると、つながってると思うから……」 「了解。任せて」 「……そんなに、避けなくても――――……関係ないかも、しれないんだけど。ごめん。迷惑、かけるかも」 「別に、そんなの迷惑じゃないし。ていうかあんたが一人でいいってところに、むしろ無理やりついてきたの、オレだし」  四ノ宮は、ちら、とオレを見ながら、そう言って。  オレが持ってた帽子を、ぽふ、とオレにかぶせた。 「――――……これでオレの陰に居れば分かんないでしょ」  ふ、と笑顔で、そう言うと、かぶせた頭を帽子の上から軽くぽんぽん叩く。 「――――……ん……」  頷いて、少し、俯く。  ――――……なんか。 よく分かんないけど。  ……四ノ宮は……いい奴。……な気も……してきたような。  ……でもなんでこんなに、オレに構うのかは。  全然わかんねーけど……。

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