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第218話「対面」*大翔

    本当は、奏斗自身が、直接話して、全部終わりにしちまってほしいけど。  ――――……あれじゃ無理そう。……まだ、今は。  階段を上り切って、ドアを開けて外に出る。  少し離れたところで、壁によりかかっている和希を見つけて、近づく。  近づいていく間に、和希がオレに気づいて、壁から体を起こした。 「少しいいですか」 「……」  和希は、無言で頷く。  ――――……江川が言ってた、「モテる人」。  まあ……爽やかな感じのイケメンで、優しそうに見えるし。頼れそうにも、見える。これでバスケ部キャプテンで、人望あるとか言ったら、そりゃモテるだろうし……奏斗は、こういうのが好きなのかと、なんとなく分からなくもない、が。  ――――……んなこと言ってる場合ではない。 「奏斗、話したくないって言ってるので、ここで待たないでほしいんですけど」 「――――……」 「……奏斗とどういう関係でどうなったかとかは、大体聞いてます。どうせなら今直接話して終わりにしたらって、奏斗に言ったけど、まだそれも出来そうにないから、今日の所は……」 「――――……」 「待たれてると、奏斗が不安定になるんで、ここから居なくなって貰っていいですか?」  なるべく冷静にと思うけど、やっぱり、口調が、冷たいのは自覚する。  すると、和希はふ、と息をついて、オレを見た。 「――――……カナと付き合ってんの?」 「……今関係ないですよね」  言うと、和希は、またため息をついた。 「……悪いけど……やっと、見つけたから……出来たら少しでも話したいんだけど……」 「でも奏斗は会いたくないって言ってる。あんなに傷つけて、今更、何がしたいんだよ」  つい、口調が荒くなって、口を一度、閉じた。  和希も少し黙ってから、ゆっくりと口を開いた。 「あの時しか別れられないって、思ったからそうしたけど――――……あの時でも、ほんとは無理だったって、すぐ分かった」 「――――……」  ……好きだったって、ことかよ……。  ――――……なんとなく、そうかも、とは……思ってたけど。 「傷つけて泣かせたからにはもう、そのままいくしかないって思ってた――――……けど……部活のメンバーからも姿消したの聞いて、まだカナも引きずってるのが分かって……そしたらもう我慢出来なくなって、会おうと思った」 「――――……」 「……カナと、話したいんだけどな……とにかく、謝りたいし……」  静かに息をつきながら、和希が言う。  ……こっちも、ため息をつきたい。  もっとすごく身勝手な言い方で、身勝手なことを、言うなら。  ――――……掴みかかってでも、ここからどかすのに。 「……とにかく今は会いたくないって。……震えてる」 「――――……」  ふ、と顔を上げて、オレを見つめてくる。 「……引いてやってくんない? あんたが帰ったって言えば、落ち着くから」 「……分かった」  和希が頷いて、話が終わりかけた、その時だった。 「ちょ……何、してンの、四ノ宮……」  後ろから、腕を掴まれて。声で分かったが、江川だった。  ……お前、ちゃんとこいつ見張ってろよ。  理不尽だと思いながらもムカついて、思わず睨むと、江川がめちゃくちゃ引いて、眉をひそめる。 「あのカズ先輩、急に居なくなったからどうしたのかと思って……」  江川が和希にそう言うと。 「……ああ。まだ前半だったし……ちょっと気になることがあったから……。もう、戻るよ」  和希は江川にそう返すと――――……オレに視線を向けた。  

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