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第219話「ずっとついてる」*大翔
「あのさ……カナに言っといてくれないかな」
「……何を」
「あの時、バカでほんとにごめんって」
心底、そう、思ってるんだろうなと。
――――……思いはしたけれど。
「……遅ぇだろ。何で、分かった時点で言ってやらなかったんだよ」
「……あんな風に別れて、よりを戻したいなんて、そんなの言える訳ないって思ってたから」
「じゃあ何で今……」
「……カナも引きずったままなら……とにかく謝りたいし話したいって、思ったんだよ」
確かに、ものすごい引きずったままだとは、思うけど――――……。
「オレは……これ以上、惑わすなって、思うけど」
そう言うと、和希はオレを見つめたまま、小さく頷く。
「――――……分かってるんだけど……」
和希がまた少し、俯いた。
「……もし、話す気になってくれたら、番号変わってないからって、伝えてくれる?」
「……奏斗が大丈夫そうなら伝える。無理そうなら言わない」
そう答えると、和希はオレを見て――――……もうそれ以上は何も言わず、頷いた。
それから「戻ってる」と江川に言って、和希は歩き去っていった。
少し離れてから、江川がオレに視線を投げる。
「……もしかしてさぁ、カズ先輩、カナ先輩のとこ行っちゃったの?」
江川が嫌そうにオレを見る。倍くらい嫌な顔で、見つめ返した。
「来たっつの。……知ってたのか、弟の高校」
「……幼馴染らしいしさぁ……知る機会とかいくらでもあるよね……」
「見張ってろよ……」
「オレにとっては知ってる後輩の試合だしさぁ。応援し終わって、ハーフタイムで気づいたら先輩が居なくて、まさかと思って出てきたんだよ」
「――――……」
二人でため息。
「……大丈夫なの、カナ先輩」
「全然大丈夫そうじゃない」
「……マジか……」
オレは、江川に視線を投げる。
「もう今日、こっち来させんなよ」
「……何でお前はオレに無理難題を吹っかけてくんのかな、オレに先輩を止める権利なんかないっつの」
「なんでもいいから来させんな」
そう言うと、江川は、少し考えてから。
「……まあでも多分行かないよ。さっきので、今日はやめとくってことだろうし。それにきっと……オレが、四ノ宮と知り合いだって分かってる訳だし……てことは、いざとなれば、オレが四ノ宮に連絡とって、カナ先輩につながるって、多分思っただろうし」
「……オレ、お前と連絡とれねえけどな」
「……ああ、そうね……交換しとく?」
「しないどく。どうせいざとなればお前とは、奏斗経由でとれるし」
「あ、そ……まあまた学校で会ったらね」
苦笑いの江川をチラ見しつつ、早く戻らねえと、と呟くと。
「カナ先輩、心配なんだけど……」
「大丈夫、ずっとついてるから」
「――――……あ、そ……」
江川は苦笑いを浮かべている。
「……あ、さっきの、今日の遊びってやつ……別に江川はもう参加しなくてもいいかも」
「え?」
「……何がしたいのかは分かったから」
そう言うと、江川は超嫌そうな顔をした。
「はあー!? オレさっき、めっちゃ連れてってアピールして、連れてってもらうことになってんだけどー!!」
「……ああ、じゃあ行ってくれば? ついでになんか聞き出してこいよ」
「――――…………つか、お前オレのこと、マジでなんだと思ってるの??」
「……さあ? なんだとも思ってないけど」
「――――……はー……誰だよ、こいつを、イケメンで優しくてさわやかな王子さまとか言ってるやつ……」
「誰だよ?」
「オレの周り、知ってるやつ皆言ってたわ……」
ぶつぶつ言ってるが、もう言いたいことは言い終えたし、奏斗の所に戻らないと。と、思ったが。もう一つ。言い忘れた。
「あとさ」
「何?」
「オレ、あいつと全然似てねーし。似てるとか言うなよな」
「――――……はいはい……わかりました」
呆れたような口調の返事。
「じゃあな」
言いたいことだけ言って、江川と離れようとすると、「あのさ」と止められた。振り返ると、心配そうな顔で。
「カナ先輩、任せるけど……泣かすなよな」
「……泣いてもオレのせいじゃねえけど」
「一緒に居るなら、泣かすなよ」
「……分かった」
とにかく頷くと、江川が、ふー、と息をついた。
「んじゃ、とりあえず、後でここ出たら、OKスタンプは送る」
「ああ、分かった。ありがとな」
「んー。じゃあまたなー」
手を振って江川が背を向けたと同時に、オレも、奏斗の元へと足を早めた。
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