215 / 510

第219話「ずっとついてる」*大翔

「あのさ……カナに言っといてくれないかな」 「……何を」 「あの時、バカでほんとにごめんって」  心底、そう、思ってるんだろうなと。  ――――……思いはしたけれど。 「……遅ぇだろ。何で、分かった時点で言ってやらなかったんだよ」 「……あんな風に別れて、よりを戻したいなんて、そんなの言える訳ないって思ってたから」 「じゃあ何で今……」 「……カナも引きずったままなら……とにかく謝りたいし話したいって、思ったんだよ」  確かに、ものすごい引きずったままだとは、思うけど――――……。 「オレは……これ以上、惑わすなって、思うけど」  そう言うと、和希はオレを見つめたまま、小さく頷く。 「――――……分かってるんだけど……」  和希がまた少し、俯いた。 「……もし、話す気になってくれたら、番号変わってないからって、伝えてくれる?」 「……奏斗が大丈夫そうなら伝える。無理そうなら言わない」  そう答えると、和希はオレを見て――――……もうそれ以上は何も言わず、頷いた。  それから「戻ってる」と江川に言って、和希は歩き去っていった。  少し離れてから、江川がオレに視線を投げる。 「……もしかしてさぁ、カズ先輩、カナ先輩のとこ行っちゃったの?」  江川が嫌そうにオレを見る。倍くらい嫌な顔で、見つめ返した。 「来たっつの。……知ってたのか、弟の高校」 「……幼馴染らしいしさぁ……知る機会とかいくらでもあるよね……」 「見張ってろよ……」 「オレにとっては知ってる後輩の試合だしさぁ。応援し終わって、ハーフタイムで気づいたら先輩が居なくて、まさかと思って出てきたんだよ」 「――――……」  二人でため息。 「……大丈夫なの、カナ先輩」 「全然大丈夫そうじゃない」 「……マジか……」  オレは、江川に視線を投げる。 「もう今日、こっち来させんなよ」 「……何でお前はオレに無理難題を吹っかけてくんのかな、オレに先輩を止める権利なんかないっつの」 「なんでもいいから来させんな」  そう言うと、江川は、少し考えてから。 「……まあでも多分行かないよ。さっきので、今日はやめとくってことだろうし。それにきっと……オレが、四ノ宮と知り合いだって分かってる訳だし……てことは、いざとなれば、オレが四ノ宮に連絡とって、カナ先輩につながるって、多分思っただろうし」 「……オレ、お前と連絡とれねえけどな」 「……ああ、そうね……交換しとく?」 「しないどく。どうせいざとなればお前とは、奏斗経由でとれるし」 「あ、そ……まあまた学校で会ったらね」  苦笑いの江川をチラ見しつつ、早く戻らねえと、と呟くと。 「カナ先輩、心配なんだけど……」 「大丈夫、ずっとついてるから」 「――――……あ、そ……」  江川は苦笑いを浮かべている。 「……あ、さっきの、今日の遊びってやつ……別に江川はもう参加しなくてもいいかも」 「え?」 「……何がしたいのかは分かったから」  そう言うと、江川は超嫌そうな顔をした。 「はあー!? オレさっき、めっちゃ連れてってアピールして、連れてってもらうことになってんだけどー!!」 「……ああ、じゃあ行ってくれば? ついでになんか聞き出してこいよ」 「――――…………つか、お前オレのこと、マジでなんだと思ってるの??」 「……さあ? なんだとも思ってないけど」 「――――……はー……誰だよ、こいつを、イケメンで優しくてさわやかな王子さまとか言ってるやつ……」 「誰だよ?」 「オレの周り、知ってるやつ皆言ってたわ……」  ぶつぶつ言ってるが、もう言いたいことは言い終えたし、奏斗の所に戻らないと。と、思ったが。もう一つ。言い忘れた。 「あとさ」 「何?」 「オレ、あいつと全然似てねーし。似てるとか言うなよな」 「――――……はいはい……わかりました」  呆れたような口調の返事。 「じゃあな」  言いたいことだけ言って、江川と離れようとすると、「あのさ」と止められた。振り返ると、心配そうな顔で。 「カナ先輩、任せるけど……泣かすなよな」 「……泣いてもオレのせいじゃねえけど」 「一緒に居るなら、泣かすなよ」 「……分かった」  とにかく頷くと、江川が、ふー、と息をついた。 「んじゃ、とりあえず、後でここ出たら、OKスタンプは送る」 「ああ、分かった。ありがとな」 「んー。じゃあまたなー」  手を振って江川が背を向けたと同時に、オレも、奏斗の元へと足を早めた。    

ともだちにシェアしよう!