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第232話「男に興味」*奏斗

 マンションについて、四ノ宮の部屋に入って、食事の支度を手伝った。  特にさっきの話とかは何もしないで、ごくごく普通の会話をしながら。  それで、一緒に食べ始める。  ――――……少し前まで、隣に住んでることも、知らなかった。  人当たり良いけど、本気じゃない気がして、胡散臭いって思ってて、あんまり近寄りたくなかった。  ……ゲイってバレた時は、もう、終わったと、思った。  よりによって、一番知られたくなかった奴だって、思ってた。  それから……四ノ宮と居る時に、なんか、色々あって。  ……ズカズカ、オレの世界に入ってきて。  こいつがオレの秘密とかを、周りに面白おかしく言ったりはしない奴だって思ってからは――――……なんか、信用、してるのか、何も隠せないで、全部、色んなこと、知られてる気がする。  ……こんなに、オレがしてること全部知ってるのは、四ノ宮しか居ない。  そもそもオレがゲイだっていうのを知ってるのは、家族と和希だけだったし。……あとは、リクさんと、クラブの中の人たちだけ。……まあ大地にもバレてたと知ったけど。  ゲイで、和希と付き合ってて振られて。家族ともうまくいかなくなって家を出たこと、クラブでしてたこと、和希が最近オレと話したいって言ってること。その内の、どれか一部を知ってる人たちは、何人かずつは居るけど。  ……全部を知ってるのは、四ノ宮だけで。  ――――……しかも。薬盛られた時に、相手をしてもらって。キス、とか、色々してるのも。四ノ宮だけ。一緒にご飯食べたり、真斗の試合一緒に見たり、一緒に……寝たり。  ………………なんか。  意図するしないに関係なく、相当、特別なとこに、居る。……気がする。 「……奏斗?」 「――――……」 「奏斗?」 「え。……あ。何?」  隣に居る四ノ宮に視線を向けると、ふ、と苦笑い。 「寝てんの?」 「……ううん。起きてる」 「分かってるよ。真顔で答えないでくれるかな…… 美味しい?」 「うん。いつも、美味しい」 「――――……はは。そっか」  いつも、に止まったのか、四ノ宮はオレを見つめてから、また笑った。 「いつもとか、普通に嬉しいかも。葛城に料理勉強させられて良かったな」  クスクス笑いながらそんな風に言う。  勉強してた料理を……オレだけにずーっと作ってくれてるけど。  ……それは、楽しい、のかな……。  …………ずっと、意味が、分からなかったけど。  ――――……何でこんな構うのか、一緒に居るのか、キスしたり、一緒に寝たり、するのか。  何回したって、執着したりしない。  あんたに好きな奴が出来たら、そこでちゃんとやめてやる。  ホテルで話した時、四ノ宮、そう言ってた。  …………オレにちゃんとした、相手ができるまで。  見も知らない奴と、するなら、オレがするって。  …………恋人作る気ないって言ったら、それなら、ずっと居るって。  一生恋人要らないなら、一生付き合うって。  …………意味が、分からない。 「奏斗、考えごと、してる?」 「……してる……」 「後で話してくれる?」 「……まとまるか、分かんない」 「まとまんなくてもいいから、途中経過で、話せる?」 「…………無理かも」 「――――……まあいいけど……」  そんなこと言いながら、四ノ宮はクスクス笑ってる。  いいんだ。  ……そっか。  ――――……四ノ宮は、不思議だ。  すげーズカズカ来るし、強引だったり、なんかちょっと機嫌悪くなったりするけど。なんか、ここって時は、たまに引いてくれて。……たまに優しくて。  ……さっき、大事だからって。  ――――……言ってたなあ……。  …………どういう意味???  よく分かんない。  男に興味なんか、絶対無いはず。  絶対、女の子……というか――――……そもそも、男となんて、考えたこともなかったタイプだろうなと思うし。  ……何がしたいんだろ。  ちら、と隣の四ノ宮に視線を向ける。  ……ていうか、そもそも、四人掛けのテーブルで隣に座ってるのから、おかしいしな。  慣れてきてるけど、改めて思うと、絶対おかしい。

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