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第233話「何でオレは?」*奏斗

 食事を終えて片付けた。  シャワー浴びたいし、着替えとかも無いし、帰る、と言うと。  シャワー浴びたら、コーヒー淹れて持ってきて?と言われた。  ――――……なんか。結局朝からずっと、世話、かけた気がするし。  ……それくらい、いっか、と思って、頷いた。  家に帰って、シャワーを浴びて、コーヒーを淹れ終えて、何となくスマホを手に、ソファに腰かけたところで、四ノ宮からメッセージが届いた。 『もうシャワー終わったから、いつでもいいよ』と。 「分かった」と返す。  なんか最近ずっと、生活してる全部に四ノ宮が絡んでて。  ――――……何でこんな感じだろうと思うと。  ……オレが、ふらふら、情けないからかなあと、思いついた。  ……後輩なのにな。  心配させちゃってる、気がする。  ……でも、普通の人は、心配するか……。  振られて、家族にバレて、家を出て一人暮らしで、行きずりの奴と一時限りで寝て。泣いたりうろたえたり。情けないとこばっかり見せてる気がするもんなぁ。ここまでくれば、心配するか……。  …………もうちょっと、しっかりしよう。  四ノ宮に心配かけずにいられるように。  うん、そうしよう。  気を取り直して、立ち上がると、コーヒーとスマホを持って、家を出た。  ピンポンを鳴らすと、程なくドアが開く。 「おかえり」と迎えられて、ちょっと戸惑う。  おかえり、か。  オレの帰る家は、隣だけど。と思うけど。 「……何で、そんなに嬉しそうなの」  そっちの方が気になって聞くと。 「ちゃんと、戻ってきたから」  と笑う。何と答えていいか、悩む……。 「鍵かけて」  言われて、ドアに鍵をかけて、部屋に上がる。 「もう、こっちで寝られるようにしてきた?」 「――――……オレ、今日もここで寝るの?」 「問題ある?」 「……でも……」 「……まあ、後で話そうか。コーヒー、飲も?」  そう言う四ノ宮に頷いて、一緒にリビングに。  四ノ宮が出してくれたマグカップに、コーヒーを注ぐ。 「牛乳入れる?」 「あ、うん」  なんかこの流れも慣れてきたなぁ……。  テーブルで並んで、一緒にコーヒーを飲む。  また、隣同士で、並んで。 「……あのさあ、四ノ宮」 「ん?」 「二人なのに並ぶって、変だと思わない?」 「別に?」 「……他の人ともこうやって並ぶの?」 「並ぶ訳ないし。……てか、家にそんな、呼ばないし」 「呼ばないの?」 「呼ばないよ。オレ、基本、家には他人を入れたくないから」  その言葉に、ものすごく複雑な気分になる。  ……他人は入れたくない、って。  ……オレは、嫌がっても、居させられてる気がするんだけど気のせい??  むーん……??    ちょっと眉をひそめながら、コーヒーをぐびぐび飲んでいると、隣の四ノ宮が、クスッと笑った。 「なに考えてる?」 「……いや。別に……」 「絶対今何か思ってるよね。何?」  ニヤニヤ、面白そうに笑ってる。  ……別に思ったこと言う位、いいか。そう思って。 「何でオレは? って思ったけど……」  そう言うと、四ノ宮は、ああ……と相槌を打ってから、ふ、と笑んだ。 「奏斗も、他人ではあるけど……これはもう、必然ていうか。連れてこざるを得ない感じっていうか」  ……必然?   連れてこざるを得ない……???  全然分からないけど。 「分かんない」 「――――……そこら辺の他人とは違うってことだけどね」 「……意味が分かんない」 「……まあいいけど。分かんなくても。……オレもよく分かんないし」 「……分かんないの?」 「分かんないけど、違うってことは分かってる」  ううん。  ……良く分かんない。  そんな良く分からない会話をしながらコーヒーを飲み終えた。

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