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第235話「何も考えない」※

 四ノ宮とするキスは。  ……意味を考えなければ。  ただ、気持ちいい……気がする。 「……っん……」  口の中、舐められるのも。舌を絡め取られるのも、吸われるのも。  頭、ぼうっとして、力が、抜けてしまう。 「……んん……」  手加減無しで、本気で、キスされてるみたいで。  密着させられて、逃す気はかけらもないみたいな、キス。   「――――……奏斗……」  ゆっくりゆっくり、唇が離れて。  自然と滲んでたまってた、オレの涙を、四ノ宮が拭う。 「……なんも、考えないでいいよ。――――……なんも考えないで、気持ち良くなって」 「――――……」 「……あんたが、オレを本気でいらないって言うまでは――――……ずっと居るから。安心してて」 「……」  何言ってんの。オレ、別に……。  ……居なくなるとか……不安に思ってる訳じゃ――――……。 「だから、とりあえず、何も考えないで、オレに抱かれてて」 「――――……」  また唇が重なる。  どうしてか、何も言えない。  その後、ベッドに組み伏せられて、頭溶けそうになるほど、キスされて。  キスされながら、四ノ宮の手が、体に触れる。  気持ちいいとこを、じっくり探すみたいに、なぞられて、弄られて。  ぴく、と自然と反応したところを、舐められて、甘く、噛まれる。  いつのまにか、服は脱がされて、オレだけ、全裸で。  恥ずかしいんだけど、そんなことも言ってられない位。頭、真っ白。 「――――……ッ……ん、ん……」  ――――……今まで、二時間で終わらせてきた相手は、ここまでは、しない。キスも、避けていたし。泊まる気なんて無いから時間もないし、オレも相手も、つながるための準備をするために触れ合う、というのが正しかったと思う。女の子とは違うそこを使って、気持ち良くなるための、準備をしてただけ。  ……なんか、四ノ宮は、全然違った。  入れるため、じゃなくて。  ……なんか、ただ……オレを気持ちよくしたいだけ、みたいな。  優しいけど……気持ちよくて、おかしくなりそうで。  何度も。準備だけで、イッちゃって。  何でとか、そういうのも、口に出てこない。  ただ、荒い呼吸、かみしめては、キスで解かれて。また、喘ぐだけ。 「ね……奏斗?」  どれくらい、されてたのか分からない。  全部に触れられてから、ようやく、中、慣らし始めて。  ああ、やっと、なんて思っていた時、名を呼ばれた。 「――――……」  四ノ宮の顔を見上げると、クスっと笑って――――……ちゅ、と頬にキスされた。 「オレの、なめたい?」 「――――……」  四ノ宮の――――……。 「……ん? する?」 「――――……うん」  唇を指でなぞられて、ぞく、として。  自然と、頷いていた。  ……そうしないと、たたないってことかな、と思って。  なんか、力、入らないけど――――……ゆっくり起き上がると。  ようやく、上を脱いだ四ノ宮が、ズボンから、それを引き出す。 「――――……」  ……たたないってことじゃ、ないんだと、ぼんやり思いながら、座ってる四ノ宮に近づく。 「……たたない、のかと、思った」 「は? な訳ないじゃん。――――……馬鹿だね、奏斗」  クスクス笑いながら。  それに触れて舌を這わせてから、口に含んだ、オレの頭に優しく触れる。 「最初っから、こうだったし……」  笑みを含んだ声。  ……硬くて熱いそれを、指と口で刺激しながら――――……。  ずっと、こうだったのに、……オレばっかり、ずっとずっと、してたのかと思うと。  ――――……なんか、めいっぱい、してあげようかなとか。思ってしまう。 「――――……奏斗……」  は、と息をつく、四ノ宮の呼ぶ声と。  優しく髪に触れる、触れ方。  ――――……散々慣らされた体が。なんだか、ぞくりと、反応する。

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