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第236話「上書き」*奏斗 ※

「……上手、だよね……かわいー」  オレの頭や耳に触れて、ゾクゾクしたものを掻き立てながら、四ノ宮が言う。  ――――……可愛く、ない。  ……オレが、これをうまいのは……それだけ、色んな奴と、してたってことで。全然可愛いというようなことじゃない。 「もういいよ。……出ちゃいそ」 「――――……ん、ん……」  口から、外されて。唇を、指で拭われる。 「……奏斗の中、入れたいし」  そんな言葉に、一瞬、視線が落ちて――――……オレは、再び四ノ宮を見つめた。 「――――……あのさ……」 「ん?」 「……あの――――……オレ」 「うん」 「……色んな奴と……して、たけど……」 「……?」 「………………汚いとか……思わない?」  言った直後。  何言ってんのこの人、みたいなしかめ面をされた。  目の前に座ってたオレを、ベッドに押し倒して、手早くゴムをつけた四ノ宮は、オレの上に押し乗ってきて、顎を掴んだ。 「……それ言うならオレも色んな子としてきたけど。……汚い?」 「――――……」  聞かれて、ううん、と首を振った。  でも、それは――――……女の子で。 「……何でそんなこと言うの。そう思ってた?」 「――――……」 「……色んな奴としてるから汚いって?」 「――――……」  ……ちゃんと、言葉にして考えたことは、無かったけど。  とっさに出たから、きっと、そうなんだろうなと、自分で思って。  ……なんか余計なこと、言っちゃったな、と、頷けずにいると。 「――――……ほんと、余計なこと、考えるよね……」  ぐ、と後ろにあてがわれて。  途中まで一気に、突き上げられた。 「ッ!……っ…………あ……っ」 「――――……気持ちいい?」 「……ッ……」  キスされながら、今度は、奥まで。  ぞくぞくしたもので、真っ白になる。 「……汚いなんて思ってたら、抱きたいなんて、言わない」 「――――……ッ……」 「ほんと……バカだな……」  言いながら、めちゃくちゃ、キスされる。 「……すっげー、可愛いけどね……?」 「……あ……っ……ン、ぅ……ッ……」  何度も深く突き上げられて、小刻みな喘ぎが、止められない。  中だけで、ずっとイッてるみたいな、感覚。    「や、ぁ……っ……」 「あーもう……エロい……」  興奮したみたいな声で、囁いた四ノ宮に。  首筋に、噛みつかれる。 「……ひ、ゃ…………っ」  ずっとイッてるみたいな感覚があるのに、不意にオレのに触れて、四ノ宮が扱き始める。 「……っんん……ぁ……や……」 「――――……気持ち、いいね?……」  クスクス笑う四ノ宮に、首筋から顎をなめられて、そのまま、喘ぐ唇を塞がれる。  四ノ宮の抱き方は。  全部優しいけど、熱くて、激しくて。たまに、容赦なくて。  気持ちいいって、言うまで、イかせてくれなかったり。  ……なんだか。色んなことを覚えこまされるみたいな。  今まで抱かれてきたのを、四ノ宮で上書きされるような、感覚。  その夜は、何度か分からない位、抱かれた。  うとうと、しても、また、揺すられて、目が覚めて。  また快感の波にさらわれて。  ――――……もうなんか……途中から、声とかも我慢できなくて。  途中でいつの間にか持ってきた水を、口移しで飲まされる。  なんか、それにも、すっかり、慣れて。  数えきれない位、綺麗、とか。可愛い、とか。言われた。  マジで、酸欠になりそうな位、キスされながら――――……  四ノ宮と、抱き合った。  

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