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第238話「オレだけのに」*大翔

 誰か適当な奴に抱かれるんなら、一生、抱いてもいい、なんて言える位、オレは、奏斗が「大事」で。離れたくないなら、離れなければ良い。  オレは、奏斗が大事だってこと、思い知らせてやれば良い。  そう思ったのだけれど、それでも――――……それが今の奏斗にとって、良いのか、よく分からなかった。  和希に会って、少なからず動揺して、ふらふらクラブに行ってしまうような、投げやりな感じの、今の奏斗に、それを言うタイミングが、今かどうかがよく分からなくて。  ……和希のことが完全には片が付いてなくて、もしかしたら、これからまた色々あるのかもしれないし。  ……しょうがない、コーヒー持ってきたら、色々話してみるか。  そう、思っていたのだけれど。  風呂上がりのホコホコした感じで、コーヒーを持って現れた奏斗を見て、一瞬で決まった。  ちゃんと、ここに戻ってきてくれたのが、こんなに嬉しいとか。  ……正直、そんな風に思う自分が、全然意味が分からないが。  でも、オレが、奏斗を大事で、どこにも行かせたくないのは、確か。  自分を大事に思えてないこの人に、大事だって思い知らせてやろうと思った。  それの手段は、まずは、奏斗が、自然と求めてしまうことでいいんじゃないかと。人に抱かれることで、多分、ぬくもりとか、求めてるんだろうと。  だから――――……断れないような誘い方をした。  オレのことを「絶対に嫌だ」なんて、奏斗は言わない。……言えない。  それは確信していた。  だから、あの聞き方は少し卑怯だったとは思うけど。  ――――……今はそれでいい。  卑怯でもなんでも、体だけでも。  和希としてたより、他の誰としてたより。  オレとするのが、気持ちいいって、思うようになればいい。  相性がいいのは、前回ので分かってるし。オレとキスするのは、嫌じゃないみたいなのも。そこでもう第一段階はクリアしてるし。  ――――……他の奴に抱かれたいなんて、思えないように。  最大限に、気持ちよく、させたつもりだったけど。  ――――……なんか、むしろ、こっちが、そう思わされたような。  ぐっすり眠ってるその顔に、自然と微笑んでしまう。  ……なんかオレ。  もうこの人以外と、したくないかも。 「――――……」  頬に触れて、そのまま髪の毛を撫でると、ぴく、と指が動いて。  そのまま、またぐっすり眠る。  ……すげー、可愛いかも……。  すり、と頬に触れる。 「――――……」  このままずっと、オレのとこに、居てくんないかな……。  なんて、思ってしまう。   深く関わるようになってから、色々あったけど。  一番腹が立ったのは――――……昨夜、してる時に、汚くない? と聞かれたこと。  色んな奴と寝てきた自分のこと、汚いとか、思ってんのかと思って。  すげえ腹が立った。  そんなわけないし。  そんなこと思うなら、そもそも、こんなに構ってねーし。  そんな言葉が、あんな時に自然と出るなんて、マジで、ありえない。 「――――…………」  あんなこと、絶対、もう言わせないようにするから。  ……ずっと、オレのとこに居ればいい。  そう思って。  オレが、間違って抱いてるとか微塵も思われないように。  オレに抱かれることに、慣れてしまうように。めちゃくちゃ、抱いた。  眠り始めた人を抱いて起こすなんて、初めてやった。嫌だったかな。でも。  ――――……最後の方は、反応が、素直だった気がする。  目が覚めても、オレをまっすぐ見て、オレに抱かれててくれたら良い。  ひとりで泣かせるとか、もう、絶対ムリ。  もう、オレのに、するために、動く。  フラフラしないように。オレだけのに。

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