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第239話「可愛いとか思いすぎ」*大翔

「……ん……?……」  不意に声がして、けほ、と奏斗が少し咳をした。  それで、自分がうとうと眠っていたことに気づいて。  オレから起き上がろうとしてた奏斗に腕を回して、抱き寄せた。 「――――……っ」  腕の中で、びっくりした顔して、オレを見上げる。 「……起き、てた?」 「……咳で、起きた。おはよ」 「うん……はよ……」  言って、そのまま俯く奏斗。見えるのは前髪のみ。 「――――……奏斗……?」 「――――……」  顔を上げさせようとしたら、なんかそのまま、オレの鎖骨辺りに、額を押し付けてきた。  ……甘えてんなら、可愛いけど。  まあ絶対違うだろうな。  顔見せる位なら、押し付けておこう、って感じがする。  ……つか、それでも、可愛いか。  自然と微笑んでしまっているのを自覚しながら、昨日で大分抱き慣れたその体を、より引き寄せた。 「顔、見せたくない?」 「――――……」  頷いてる。 「今だけ?」 「――――……」  プルプル首を横に振ってる。 「……ずっと、顔、見せない?」 「――――……」  うんうん。頷いてる。  ふ、と吹き出してしまう。  は。可愛い。 「何で? 恥ずかしい?」 「――――……」  それには、うん、とは言わず、なんだか首を傾げている。 「――――……どーしていいかわかんない、とか?」 「――――……」  しばらく微動だにしなかったけれど、その内、首を縦に振ってる。 「……まあ良いけど。――――……水、飲む?」 「……」  顔上げなきゃいけないからなのか、しばらく悩んだ末頷いたので、腕を伸ばして昨日置いてたままのペットボトルを、奏斗に渡した。  のそのそ起き上がって、オレに背を向けて起き上がって、水を飲んでる。  昨日抱いたまま、全裸だったから、起き上がると、綺麗な背中が目の前に。 「――――……」  飲み終えて、ペットボトルの蓋を閉める気配。  オレは、奏斗の背中に、すー、と指を這わせた。  ビクッと飛び跳ねて、なんかすごい顔して振り返る。 「マジで、やだ」  なんかすごく嫌そうな顔をされて、笑ってしまいながらもその手を引き寄せて、ベッドに組み敷いて。真上から奏斗を囲う。 「――――……ッ……」  かあっと赤くなる。  ……そういう反応が――――……可愛いと思ってしまうんだけど。  意図してできるわけじゃないだろうけど、なんか可愛すぎて……なんだかな……。 「奏斗」 「……っ」  まっすぐ見つめると、もうなんだよっと言わんばかりの困った顔で、オレを見てる。 「何。やっぱり恥ずかしいの?」  するっと頬に手をかけると、眉が寄る。 「――――……だって、お前、やりすぎ……」  ムッとして言われると。  ……あー、なんだかなあ。可愛いな。  ちゅ、とキスすると。  奏斗は両手で口を覆って、ぷい、と顔を逸らした。 「――――……すげー可愛かったけど。昨日。っていうか、割と、さっきまで、か」  クスクス笑ってしまうと、奏斗は、めちゃくちゃ眉をひそめて、オレを見る。 「可愛いとか言うなよ!」 「――――……可愛い以外のなにものでもなかったけどね」  手を、わき腹を通して、腰に回すと、びくう!と震えて、身を縮める。 「――――……」  思っていた以上の反応に、ちょっと驚いてると、奏斗が、触んなよ、と喚いてる。 「――――……」  は。何これ。可愛いな。  ――――……そう思ってしまうのだけれど、あんまり可愛いばかり言ってると、そろそろ本気でキレられそうな気がするので。 「ちょっとおいでよ」  ぐい、と引き寄せて、向かい合わせみたいに抱き寄せて、奏斗の頭を、自分に押し付けた。 「――――……ちょっとこのまま、居よ」 「――――……」  なんか、奏斗は、顔を見られる位ならと、思ったのか、特に暴れず、じっとしてる。 「あのね、奏斗」 「……ん?」 「――――……オレ、本気で、側に居るからね」 「――――…………てか……何で?」 「……居たいからとしか、言えないけど。それがすべてじゃない? 人と居る理由なんか」 「――――……」 「オレあんたが大事だから。居るから」 「――――……」 「……オレで良ければ、オレとシたいっていつでも言って」 「――――……」 「オレも言うけど。……でもそれ抜きにしても、居るから」 「――――……」 「前言ってた、見合いがどうとかの話も。あんたの側に居る限り、当たり前だけど受けないから」 「――――……」  奏斗は、ずっと無言。  でも、オレの言葉を聞いてる気はするので、気になってたことを全部言ってくことにする。  

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