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第241話「したいこと」*大翔

「――――……」  キスしてる内に、すっかりその気になって、そのまま抱いてしまった。  キスまでなら諦めてくれてた奏斗は、体に触れだした瞬間ビクッと震えて、噓だろ、とオレを見た。  若干の制止はあったけれど、無視して、奏斗の感じるところに触れた。  快感に弱すぎる奏斗は、すぐにオレの思うままで。  体を繋げて、中を突くと、思うとおりに上がる声に煽られて。  ……めちゃくちゃイかせてやってたら、ふっと気を失うみたいに眠ってしまった。仕方なく抜いて、後始末。  寝てるのにやり続けて起こしたら、さすがに朝から、キレられそうな気がして、やめておいた。  目尻に涙。  ――――……これは。気持ちいいからだと思う。  多分シてる間は、何も考えてなさそう。  反応するのに必死で。我慢したいみたいだけど結局声をあげて。  ――――……快感に弱いのは……和希のせいなのか。  色んな相手が居たからなのか。  ……汚い、とは微塵も思わないけど、この人のそういうとこを見た奴らが何人もいるんだと思うと、そっちはムカつく。  ……好き。だとは思う。  ――――……オレは、嫌いな奴なんかに構うような人間じゃないから。  相当好きなんだとは思う。  ただ、恋愛なのかとか聞かれるとよく分からないし。  今は、まだ、この人にそんなの求めたって、無理だろうし。  ――――……決めなくていいんじゃないかと。  ただ、側には居るし、一人にはしたくないし。  ……大事に、したい。  大事に思われてるって、思わせたい。  ……とりあえず、それでいいよな。  こっちを向いてスヤスヤ眠ってる頬に、片手を触れさせて。すり、と撫でる。  普段はほんと、純粋に可愛いけど。  抱くと、途端に乱れて。――――……耐えようとするのも、なんか可愛いし。  ……この人を抱いてて、よく、別れる決意、したよな。  そんだけ、高校生の普通の男には、ゲイになるってことが重かった、てことかな……。  頬に触れてた手で、布団を奏斗の肩まで引き上げる。  そのまま奏斗を引き寄せて、抱き締める。 「――――……」  別れたの高校生で……それがずーっとトラウマみたいになる位、あいつが好きだったってことだよな。  昨日会った、和希の顔が浮かぶ。  ……ああいうのが、好きなのか。なんて思い出すと、なんだか、面白くない。  江川が言ってた。モテる人って。まあ……多分オレとは違う、裏表もなく、まっすぐな感じの良い奴そうな。……この人が好きになりそうって、すごく分かる気がする。……どうしてか、ものすごく、ムカつくけど。  泣いてたんだろうな……。  和希と別れた後。一人で。  ――――……父親と揉めて否定されながら。……真斗が居て、まだ良かったんだろうけど。  和希は和希で、自分のことに必死だったんだろうけど。  ――――……そんな理由で振られて、泣いて。おかしくなって。  一人で暮らして。友達とも連絡も取らず。  オレがなんとなく面倒で連絡しないのと、この人がそんな理由で友達に連絡とらないのは、全然話が違うんだろうし。  その頃の奏斗のことを、想像するだけで、なんだかたまらなくなる。  とにかくもう一人では泣かせない。  側に居る。  和希と何があろうが、どうなろうが。  ……本気で嫌がられるまでは、絶対離れない。  オレがしたいのは、それ。  そう決めた途端、何だかすごくすっきりした。   「……奏斗」  抱き寄せて――――……なんとなく、静かに、名前を呼ぶ。  ……まあ多分、心底嫌がられてはいない。ってだけで今は良しとしよう。  ……しょっちゅう意味が分かんないって言われてはいるけど。  ふ、と、苦笑いが浮かんでしまう。  確かに、意味が分からない。  ……こんな風に側に居たいとか。なし崩しみたいな感じでもいいから、とりあえず側に居て、大事にしたいとか。  自分でも初めてすぎて、まったく意味が分からない。  …………けど。そうしたいのは、まぎれもない、事実。  ……オレに大事にされるのはいつものこと、くらいまで。  どーにかもっていくしかないな、と。色々考える。

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