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第243話「ムカつく」*奏斗
色々考える間に、顔の熱は引いたけど、なんだかもう、起きる気がしなくて、ぐったり倒れていたら。結構経ってから、四ノ宮が戻ってきたみたいで、静かにドアが開いた。ドアに背を向けて、布団にもぐってるのをいいことに、動かずに居ると。
「奏斗……?」
四ノ宮が手をついたと思われるところが、ぎし、と軋んだ。
すぐに頭に、手が触れてくる。
「奏斗、起きれる?」
「――――…………」
ゆっくり振り返ると。
――――……四ノ宮は、なんだか、すごーく、さっぱりした顔をしていて。
にっこり笑う。
「おはよ。一回、朝食べない?」
「……」
「食べても眠かったら、寝てもいいから」
「――――……起きる」
言いながら、体を起こすと、オレはまだ裸で。
……下半身は布団に入ってるからいいけど。
「……そう? 寝ててもいいのに。ていうか、オレも一緒に寝るし」
ふ、と瞳を細めて笑うその感じが。
……最初の頃、四ノ宮を胡散臭いと思っていた頃とは、別人みたいで、なんだかすごく、不思議。だってあれ、そんなに遠い昔じゃないし。
オレの見る目が、変わったのか、四ノ宮が変わったのか。
よく分かんないけど。
とにかく、笑い方が、自然すぎて。……何で、その笑顔をオレに向けるんだて思う位、優しい感じで。
……やっぱり、とことん、意味が分からない。
「……宇宙人……」
「――――……は?」
「……て感じ。お前……」
「……はー?? 寝起きに、それを一番に言う?」
「――――……」
寝てないし。起きてたし。
「……っとにもー。何なの、あんた」
呆れたように笑って、四ノ宮が、ベッド下に落ちていたオレの服を、オレの布団の上に乗せた。
「ごはん出来てるから先食べよ? シャワー浴びたいなら後で浴びて?」
「……うん」
……なんか昨日、オレ、ぐちゃぐちゃになってた気がするけど……。
拭いてくれたのかな。あんまりその形跡は無いような気がする。
「服、着て? 行こうよ」
「……ん」
頷くと、四ノ宮はオレを見下ろして、笑いながら、部屋のカーテンを開けた。
「置いてったら動かなそうだから着るの待ってるよ」
クスクス笑いながら、四ノ宮はベッドに腰かけた。
別に、すぐ行くのに。そう思いながら。でも待たれてるとなると仕方なく、服を着始める。
下着を身に着けてからベッドの端に移動して、ズボンをはいて、完了。
着終えた瞬間、手首を取られた。
「行こ」
言いながら振り返り、笑って見せてから、四ノ宮は歩き始める。
そのまま、引かれながら寝室を出て、洗面所に入れられた。
「パン焼いとく。顔洗ってきてね」
「……ん」
最後、背中をポンポンと優しく叩いて、四ノ宮は、姿を消した。
「――――……」
顔を洗って、タオルで拭く。
なんかほんとに――――……四ノ宮の顔を見るのも、恥ずかしい気がする。
オレがあんなに乱れることを、四ノ宮は、普通だと、思ってるんだよな。
……きっと、いつも誰かに抱かれる時ずっとああなってたんだって、思ってる、筈。
――――……そんなことは、ないんだけど。
……正直、演技入ってた時もあるし。
毎回、すごく気持ちいいってよりは、わりと気持ちいいか、演技が必要かみたいな感じだった気がする。
……ていうか。
四ノ宮とシてから、オレって抱かれてる時どうだったかを、ちゃんと認識したのかもしれない。
正直、和希としてた時のことは……いまいち参考にならない。大好きだったから、それだけでもう嬉しくて、気持ちよかったし。ああいうこと、覚えたてで夢中だったし。
和希と別れて、大学生でクラブに行くようになってからは。
……演技もできるし、それがバレたこともないって思ってて。……快感を、わざわざ追おうとしてたし。触られれば気持ちいいし。快感はあった、と思うけど。
……四ノ宮にされてる時は、演技しようとか、わざわざ追おうとか、一切してない。……ていうか、出来ない。
頭ん中、真っ白で。
次々気持ちよくて。どうしたらいいか、よく分からない位。
……うまいのかなあ。すごく。
ほんと。……ムカつくなー。
……なんでもできるって感じ。
四ノ宮にされてる時のオレが。他の奴にされてる時のオレと、イコールだと、思われるのが、何か、嫌だ。
いつもあんなに乱れてたのかと、思われると、もう恥ずかしいし。
……でもだからって、四ノ宮にされてる時だけ特別なんていうのも、なんか…………いや、それは、もっと嫌な気がする。
……これ、どうしたらいいんだろ。
――――……なんだかなぁもう……。
「奏斗、まだ?」
リビングの方から、四ノ宮が呼ぶ声。
ちょっと息をついて。――――……リビングに向かった。
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