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第245話「パーティの誘い」*奏斗

「ごちそうさま」  食べ終わって、手を合わせて、四ノ宮に向けて言うと、四ノ宮は満足そうに笑う。 「美味そうに食べてたから、作って良かった。また食べたい?」 「……」  無言で、小さく頷くと、四ノ宮はまたにっこり笑った。 「奏斗の好きな朝メニューが増えてくね。今度和食も作ってみようかなー」  そんなことを言いながら、立ち上がって、皿を運び始める。  一緒に残った食器を運んで、流しに立った。 「あ、そうだ。あのさ」 「ん?」  オレが洗ったのを四ノ宮が流していく。 「奏斗、再来週の水曜の夜、暇?」 「――――……再来週? なんかずいぶん先……ゼミ合宿が終わった週ってこと?」 「そう」 「今んとこ、そんなとこに予定入れてないけど……」  答えると、四ノ宮がそっか、と笑う。 「実はさ、うちの実家でパーティがあるんだけどさ」 「何の?」 「親父がやってる、紳士服の会社の創立十周年」 「……そういうパーティを開く場所が、実家にあるの?」 「うん、ある。パーティールームみたいな広いとこ」  そんな言葉に、ほんとにすごいお坊ちゃんなんだろうなぁ、思う。 「十周年とか、オレには関係ないし。葛城に言われても、うんざりしてたんだけどさ」 「――――……?」 「奏斗が一緒に来てくれたら、楽しいなと思ってさ」 「オレが、お前んちのパーティに行くの?」 「うん。おいしい食べ物とか、色々でるよ?」 「完全部外者だけど……?」 「皆知り合い同士じゃないから、そんなの誰も気づかないから。葛城も良いって言ってたし」 「――――……やだよ、絶対邪魔だよ、オレ」 「採寸して、新しいスーツを作るって。来るなら奏斗も採寸もしたいからって葛城が言ってた。若者向けのスーツも展開してて、まあそこそこ高いんだけど、それあげるからさ。一着持ってても良くない?」 「――――……うーん……?」 「奏斗は、良いスーツ着て、おいしいごはんを食べててくれたらいいからさ。行こう?」 「……」  うーん。  正直あんまり行きたい気分じゃないんだけど……。でも……。  葛城さんに、こないだのお詫びとお礼をするチャンスかも、と思い直す。  洗い終えて、手を拭いてから、四ノ宮を見上げた。 「……いいよ。ほんとに一緒に行くだけ、でいいなら」 「え。マジで?」 「……葛城さんにお詫びとお礼も言いたいし」 「――――……ま、なんでもいいや。じゃあ決まり。キャンセル無しね」  畳みかけるように言われて、少し引きながら頷く。 「じゃあ後で葛城に電話して、採寸頼む。いつが暇?」 「あ、でも待って。ほんとにいいのか? スーツ。高いんだよね?」  気になって、オレが言うと、四ノ宮はクスクス笑った。 「奏斗が着たらすごく似合うだろうし、それで宣伝にもなるだろうから、それでいいと思う」 「似合うかな。オレ、スーツなんて……入学式ん時以来だけど」  四ノ宮も流し終えて、手を拭く。 「絶対似合うって。カッコイイと思うよ」  なんか。  ものすごく嬉しそうな顔で、オレを見つめて、笑われると。  それ以上、何も言葉が出てこない。    ていうか。  絶対四ノ宮の方が似合うに決まってるけどな。  背ぇ高いし足長いし。  ……黙ってれば、大人っぽく見えるし。  オレは絶対七五三的な感じだよな……。  うーん。オーダースーツとか。もったいない気がするんだけどなぁ……。  早速電話をし始めた四ノ宮をなんとなく見ながら、そんな風に思った。

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