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第247話「たまには」*奏斗

 自分のは適度に注いで、牛乳を入れる。  こくん、と飲んで。  四ノ宮がまだ電話してるのを後ろから見つめる。  なんか四ノ宮とばかり、一緒に居て。  他の人とはしないことを四ノ宮として。  ……結果的に四ノ宮のことばかり考えているけど。 「――――……」  でも別にこれは……恋愛感情、とかじゃないよな。  ――――……そういう意味で、四ノ宮のことが好きなわけじゃないし。  ドキドキするとか、そういうのも、別に無いし。  和希のことが好きだった時の、見てるだけでドキドキとかも無いし。  ……変な奴、とか。宇宙人とか、詐欺師とか……お母さんとか……。  いっぱいあだ名付けてるけど、とにかく意味が分かんない、変な奴……。  ……ていうか、四ノ宮も、オレを恋愛の相手として見てるんじゃないしな。  四ノ宮はオレに恋人が出来たら、身を引くから大丈夫って、言ってたし。  ……ほんと。変なの。  そこまで考えた時に、四ノ宮がやっと電話を切って、オレのそばに歩いてきた。 「火曜、授業終わったら、裏の駐車場んとこで待ち合わせたよ」 「……ん、分かった」 「なんかちょっと張り切ってたよ、オレとは違う感じのスーツを着せたら、良い宣伝になりそう、だってさ」 「オレがオーダースーツなんか着たって、絶対七五三みたいになるって」 「んなことないでしょ。絶対似合うって」  ふ、と視線が緩んで、オレを見つめる。  それには特に何も言わず、オレがコーヒーを口にすると、四ノ宮も飲もうと思ったのか、カップを見て……。 「――――……あのさぁ、このコーヒー、オレの?」 「牛乳入れられないし、もうこのまま飲んでもらおーかなーと……」 「何これ……」  四ノ宮は並々注がれて、表面張力で零れてないようなそれを見下ろして。  ものすごーくそー--っと、カップを持ち上げて、そーっと飲んでる。 「……あっぶな」 「あ、すごい。良くこぼさなかったね」  クスクス笑って言うと、四ノ宮は苦笑い。 「何考えてたの、これ淹れてた時」  そう聞かれて、じっと見つめられる。 「なんだっけな……忘れちゃった」  そう答えながら、マグカップを持って、ソファに向かう。  ソファに腰かけて、コーヒーを飲んでいると、四ノ宮がオレの隣に腰かけた。 「今日どうする?」 「――――……」 「どっか行く?」 「――――……んー……」 「それとも家に居たい?」 「……四ノ宮の好きでいいよ」 「オレの好き? ……何で?」  じっと見つめられて、何でって言われると……別にそこまで大した理由もないのだけれど。 「んー……なんかいっつも、付き合わせてる気がするから……たまには、付き合おうかなって」 「――――……ふぅん?」  そう一言呟くように言った後。  なんかものすごく嬉しそうに笑って、んー、と考えてる。 「奏斗、疲れてる?」 「――――……??」  どういう意味? どっか疲れるようなとこ行くってこと? 「夜も朝も、付き合ってもらったし」 「……っっ! もう何なの、お前……」 「別にからかってるわけじゃなくて。睡眠足りてないかなあって」 「…………ッ」  普通に話してる時に、それをつっこんでくるの、マジやめて。  ムッとして、四ノ宮を見てると、四ノ宮は楽しそうに、クスクス笑う。 「奏斗、どれくらい元気?」 「どれくらい……運動できる位は、元気」 「なんでもできる?」 「なんでも……? うん、まあ。元気だよ?」 「分かった。コーヒー飲んだら、出かけよ?」 「――――……うん」 「つくまで内緒ね」  何だかものすごく楽しそうなので、とりあえず、うん、と頷いておいたけど。  ……どこいくんだろうと、ちょっと不安。

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