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第250話「笑顔」*大翔

 ずいぶん並んでようやく海鮮丼を買えて、二つのトレイを持って奏斗の方に向かう。その先では、まだ隣の女子グループが奏斗を観察してるように見える。  まだ見られてる……。本人全く気付いてないな。 「四ノ宮ー」  もう、そっちに向かってるのに、おーいと手を軽く振ってる。  おかげで女子の視線がこっちに飛んできた。  ……何だか、すごくきゃあきゃあ騒いでいるが、無視することに。 「お待たせ。結構混んでた」 「うん。混んでたね。ありがとうね」 「ん、もう食べていいよ。おなかすいたでしょ」 「うん。いただきまーす」  隣の女子グループは超楽しそうにこっちを見ている。  奏斗の所に来るのが彼女だとでも思っていたんだろうか。そこへオレが現れて、もはや二人でデートとか思われてるんじゃないだろうという位の、興味深々な視線。  ……あ、そうかデートだった。じゃあいいのか、別に。そう見られてても。  そのつもりだし。 「ネギトロ、うまーい」  にっこにこ。  ……オレ、もしかしたら、ここまで笑顔のこの人は、初めて見たかもしれない。学校とかでも、いっつも笑顔の人だったけど。 「……奏斗さ、毎週色んな遊園地、行きたい?」 「え?」 「連れて行ってあげようか? そんなに好きなら、毎週」  パクパクほおばりながらそれを聞いていた奏斗はオレを不思議そうに見てモグモグ噛んで、飲み込んでから。 「さすがに毎週は嫌かなあ。結構疲れない?」 「あ、そうなんだ」  即頷くかと思ったら、意外と普通の答えが返ってきた。  ……と思ったら。 「隔週くらいなら行きたいかも……」  まあ実際行くとは思ってないんだろう。  そんな風に言いながら、あはは、と笑ってる。  ――――……そんなに好きなのか。  今度、遊園地の特集とか、調べてみよ、と、心の中で決めた。 「遊園地のフードコートだけど、普通においしいね」 「……何? おいしくないイメージでもあんの?」 「ん? ……ああ、そうなのかな。今自然に言ってたから、なんかそういうイメージがあるのかも……」  んー、と少し首をかしげて奏斗が考えてる。 「あー、分かった。高校生ん時に来た時食べたものが、全部あんまりおいしくなくて。たこ焼きとか、焼きそばとか。それかも?」  ふ、と笑んで、奏斗がそんなことを言ってる。 「たこ焼きとか焼きそばがおいしくないとかあんの?」 「……あったんだよねー、チンして、しばらくほっといたみたいな? 一緒に居た皆も、おいしくないよなーって、騒いでて……」  そこでふと言葉を切って、それから奏斗は言葉を探してから。 「……皆も言ってたから、あん時はほんとにおいしくなかったんだと思う」  そう言って、そのまま、またご飯を口に運んでるけど。  ……オレは、少し息をついた。 「……和希も居たの?」 「う。……居た……」  ちょっと俯いて、困ったみたいな顔をする。 「あのさ、思い出したなら隠さなくていいし。……つか、むしろ、濁さないで言いなよ」 「……でも別に、聞きたくないだろ?」 「聞きたいわけじゃないけど、奏斗が抑えるよりは良い。言った方がすっきりするでしょ?」 「……ん」  微妙な感じではあるけれど、ん、と頷いたからよしとして。  ……まあ、やっぱり、そういうのに、あいつは必ず絡んでくるのかと思うと。  まあ親友で恋人でとなると、仕方ないとは思いながらも。  まあ。ほんと、面白くはない。

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