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第265話■番外編■クリスマス🎄4 完
【side*大翔】
クリスマス。
どうすんのかなあ、この人は。
気になる人と過ごしますってのは無いとは思うけど……誰か友達とパーティするとかはありそう。誘うか、どうするか。この人から言ってくんないのかなあ。こんだけ一緒に居るんだから、クリスマスどうすんの、とかたまには奏斗から聞いてくれたらいいのに。なんかいっつもオレからばかりだし、ちょっとどうしようかなとか思っていたんだけど。
抱いた後、気怠そうに水を飲んでる姿が何だか色っぽくて。
やっぱり、オレから聞いてしまった。クリスマス、どうすんのか。
意地張っててもしょうがないやと思ったからだったのだけれど。
どうやら、誘われていたのに、行くと答えてはなかったみたい。
そっか。……意外と、オレのこと、気にしててくれたとか? きっと、そうだよな。それ以外に、理由は無さそう。
オレがいつもいつも無理無理居るから、ということが理由だったとしても。なんだか、とても、嬉しくなる。
翌日、やっぱりちゃんと断って、オレと居てくれることにした奏斗を連れて、昼間はちょっとのんびり観光して、夕方から、イルミネーションを見に行った。遊園地とかも好きだけど、水族館とかイルミネーションとかそういうところ、大好きみたいで、無邪気な感じがほんと可愛いなと思いながら、ご機嫌の奏斗と、帰ってきた。
寄ったデパ地下は、クリスマスのものしかないんじゃないだろうかみたいな感じ。
「せっかくだから、美味しいもの食べよー」
渋々オレと過ごすのOKしてくれた感だった気もするけど。
もう出かけてからはずっと、オレよりウキウキしてるし。今もすごく楽しそう。
いくつかクリスマスっぽい料理の、チキンとかサラダ、ピザや飲み物を購入。ケーキもすぐに決まったし、車に戻って、荷物をトランクに入れて帰ろうという時に、奏斗がオレを見上げた。
「なあ、プレゼント交換する??」
「……いいよ? 何を?」
頷くと、奏斗は、「じゃあ、三千円以内で何か」と笑う。
「安くない?」
言うと、「いいじゃん、それくらいで、良いもん選んで」と笑んで、オレを見上げる。
「じゃあ三十分後にここで待ち合わせしよ」
ウキウキしてる奏斗に頷いて、店内に戻ったところで、別れた。
その後ろ姿を見送りながら、んーと、考える。
オレもう、奏斗にはプレゼント買っちゃってるんだよなー。
すごく肌触りの良い、手袋。……三千円では、全然ない。
まいっか。あれは普通にプレゼントで、今から探すのは、プレゼント交換用ってことで。
つーか。プレゼント交換とか……。子供みたいな。
……なんだか顔がほころんでしまう。
◇ ◇ ◇ ◇
買ってきたものを温めて並べて、飲み物も出して、二人でクリスマス。
「あ、このチキン美味しい」
「どれ?」
「これ」
奏斗がオレの皿にのせてくる。
「ほんとだ」
「うん」
ふ、と穏やかに笑う。そんな笑顔が、結構好きだったりする。
色々食べ終わったところで、そう言えばと思って。
「そろそろプレゼント交換、する?」
「ん、いーよ。取ってくるね」
「ん」
そうだ、買って来たもの、わざわざ自分ちに置きに行ってたっけ。
別に、置いといたって見ないのにと思ったけど。
玄関まで一緒に行くと、出て行ってすぐに、奏斗の家のドアが開く音がした。すぐに戻ってきて、待ってるオレと目が合うと、「ただいま」と言って鍵を閉めて上がってくる。
……ただいまって。
笑ってしまいそうになる。
うちに来て、ただいまって。
……奏斗には何の意味もないのかもしれない。ただ、行って帰ってきて、ただいまって言っただけ。
――――……でもなんか。
オレんちに来て、ただいまって言ったことが、なんだか、可笑しくなるくらい嬉しい。とか。
「奏斗」
「え?」
腕を引いて、びっくりして奏斗に、口づけた。
「……っん……?」
深く、合わせると、疑問のついたくぐもった喘ぎ。
ゆっくり離すと、つか、なんなの?、と怒られる。
つい、と言うと、ますます怒られたけど、笑ってしまった。
その後、プレゼント交換で、お互い渡したのは。
どちらも、香水だった。
「ていうか、何で買うもの、かぶるの?」
「奏斗は、何で香水にしたの?」
「香水なら、あっても困んないかなと思って」
「そっか」
……奏斗はあんまり意味無さそうだけど。
香水って――――……意識してる人につけさせるのは、大分意味があると思う。香りをまとっててほしいとか。……独占欲に近いものもあると思うけど。
オレは明らかにそれな気がする。
見てる目の前で、奏斗がしゅ、と手首にひと拭き。
「……あ。好きかも、これ」
「あ、ほんと。良かった。……オレも、好きだよ、この香り」
「そっか。良かった」
ふ、と笑んで。
それから、奏斗がオレをふと見つめる。
「? 何?」
「……あと。……なんか、いつもさ、色々作ってもらったりしてるから」
「――――……?」
「クリスマスプレゼントっていうか……どっちかというと、お礼」
とか言いながら、何かを差し出してくる。
受け取って、「お礼」とやらのリボンを外して中を見ると。
すごく手触りのいい、マフラーが入っていた。
でも何だか不思議で、オレは奏斗をじっと見つめた。
「ていうか……何で三千円とか、言ったの? プレゼント交換とか」
そう聞くと、奏斗は、ちょっと眉を寄せた。
「……お礼に何か買いたかったけど、ずっと一緒だったしさ……離れる口実っていうか……でも、金額決めないとお前、なんか、高いの買いそうでお礼になんないじゃん? だから」
「だから、その提案だったの」
「……うん。そう」
「何で律儀に香水も買ったの?」
「……マフラー見に行った店に、色んなもの置いてあって、これ、良い香りだったから。プレゼント交換はこっちでして、お礼はお礼で渡そうと思って」
「……じゃあさ。奏斗のこれはありがたくもらうからさ」
「うん?」
「オレからも、お礼」
「え??」
用意してた手袋を渡すと、中を見て、奏斗はそれを手に取る。
「なんの、お礼?」
「……オレと過ごしてくれて? かな」
「…………何言ってんの、お前。ていうか、これ、すごい高そうだし」
もー、とため息をついてる奏斗に苦笑してしまう。
「……値段はいいよ。お互い、プレゼントしあえて良かったよね」
「まあ……そ、だね」
肩を竦めながら、笑って、奏斗は頷いた。
「手触り、似てない? マフラーと手袋」
「似てる」
クスクス笑いながら答える。
「意外と好きなもん、似てるのかもな」
そんな風に言って、奏斗が笑う。
なんかそういうの言って笑うの。
――――……ほんと、かわいい。
顔傾けて、近づくと。引かれる。
「何で引くの」
「……っまたキスしようとしてるだろ」
「してるけど。だめ?」
「…………っ」
至近距離で聞くと、言葉に詰まって、何も言えなくなる奏斗に。
何だか顔が綻んでしまう。
後頭部に手を置いて、引けないようにして、唇を重ねた。
「……来年も、しようね、プレゼント交換」
「――――……一緒に、居たら、な」
「居るよ」
「……居ないと思うけど」
「……じゃあ居たらね。 ……居るけど」
「…………」
なんだかムッとして黙る奏斗に。
ふ、と笑ってしまう。
居ないっていう前提の方が楽なんだろうけど。
……居るって思ってて居なくなるのが嫌なんだろうけど。
「絶対居るから。しようね」
「……居たらね」
あくまで言う奏斗から。
オレがあげた香水の香りがする。
何だか嬉しくなって。
ゆっくりゆっくり、キスをした。
(2022/12/31)
あとがき♡
◇ ◇ ◇ ◇
今現在の関係でクリスマスが来たら、て話でした……(笑)
本編は今、夏前なのでもはや、パラレル世界のようなものだと思って下さいませ♡
パラレルと思って。少し甘い感じに……なってました?(*´艸`*)ウフ。
次回から本編に戻ります♡
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