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第266話「不思議」*奏斗
昼のフードコートとは違って、ちゃんとしたレストラン。
ていうか、普通の街のファミレスとかより、よっぽど高いし、凝ってる。
こういうとこに来ると、平気で散財する人って多そうだもんね。だから敢えてそういう金額設定になってるのかなぁ。なんて思いながら、メニューを見てると。
「好きなの、頼んでいいよ」
「……ほんとに全部出す気?」
「そう言ったでしょ。オレ、デートで払わせたことないし」
「……それは女の子とのデートだろ?」
「今日のはデートってことで」
「――――……」
「何がいい?」
「……じゃあ、これとこれとこれとこれとこれも、頼んでいい?」
「いいけど。食べられんの?」
「……無理だけど」
むー、と答えると、四ノ宮は笑う。
近くの席の女の子たちが、こっちをちらちら見てる気がする。
……こいつと居ると、いっつもそうな気が。
今は座ってるけど、立ってる時は余計な気がする。背が高いから、それでちょっと目立って、そこにこの顔がついてると、そのまま目を奪われる。……ていう感じかなあ??
ほんと。背が高くて、顔が良いって、それだけでお得な感じ。
まあ本人はそこらへんでそれなりに色々あって、少し歪んで生きてきてるらしいから、いいことばっかりってことも無さそうだけど。でも、得なのは絶対そうな気がする。
「……じゃあ、このハンバーグのセットが良い」
「了解。飲み物は?」
「お茶が良い」
「ん」
微笑んでオレを見て頷くと、店員を呼ぶボタンを押す。やってきた店員に注文をしている四ノ宮を見ながら、なんとなく考える。
遊園地、久しぶりで、すごく楽しい。
大好きなんだけど、特に家から近いこの遊園地は、前に来た時は和希が居たし、思い出しちゃいそうな気がして、敢えて来ようとしなかった。
駐車場で降ろされた時は、ここかー、と思ったんだけど。
なんか話してる内に、平気かもと思い始めて。
一緒にまわっている間に、すっごく楽しくなってきた。
……四ノ宮は、オレと和希のこと、大分知ってるし。
――――……なんかもうそれを、受け入れてくれてる感じだし。
どうしてだろ。四ノ宮に話すのは、慣れてきてて。
四ノ宮とこういう話をするようになるまでは、和希のこと、考えるのも無理で、考えてるとどうにも本気で気分がダメになってきて……。
落ち込むし、何なら泣くし、なかなか浮上できないし。
和希が連絡先を聞いてたとか言われただけで、震えてたのに。オレ。
いつのまにか。
……四ノ宮には、話せてるのが、不思議だ。
大丈夫だよって顔で見られてると、そんな気が、してくる、というか。
……おかしい。
さっきのお化け屋敷も。
……からかいはするけど、四ノ宮は置いていかないかもって思ってた。
結局オレが、限界を迎えて、逃げちゃった時も。
……迎えに来てくれた、四ノ宮を見て。
…………なんかもう。王子様か、勇者か、ヒーローか。後光がさして見えたというか。もうとにかく、オレを助けてくれるのは、こいつしか居ない。とか、なんか咄嗟に思ったような気がして。
しがみついたら、ぽんぽんとずっと背中を叩いててくれて。
――――……どんなに落ち着いたか。
……でもその後、呪われそうなやつにキス、見られたけど。
…………そこはすっごく嫌だけど。くそー……。
四ノ宮がちょうど注文を終えて、店員が離れていく。
「十八時半か……十九時半になったら、行きたいところがあるから付き合って?」
「どこ?」
「思い当たるところ無い? 看板とかもたまに出てたんだけど」
「うん。見てないや」
「そっか。じゃあ、そのまま楽しみにしてて」
「ん」
素直に頷くと、四ノ宮は、ふ、と微笑む。
またそうやって、なんか……ものすごく、優しく笑う。
オレのこと、見て、何でそんな風な顔、するんだろうって、とにかく不思議に思う。
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