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第277話「おもしろい」*奏斗

 先買ってていいよ、と言われて、真斗に買うチョコクランチのクッキーとお煎餅と、キーホルダー二つと。あと、美味しそうなサブレを、四ノ宮にあげようととりあえず購入。  ……ていうか、こんなんじゃ、全然お礼になんないけど。  とりあえず、ここではしょうがない。  思いながら、会計を終えて、店内に目を向ける。  四ノ宮、どこだろ。  こっちで待ってればいいかな。そう思った時、奥の方から現れた四ノ宮は、なんだかとてもバカでかい、袋を持ってた。 「向こうで会計してきた」 「うん、それはいいんだけど……てか、何、それ?」  四ノ宮が抱えてるのが面白くて、吹き出しながら聞くと。 「まあまあ。あとで見せてあげるから」 「……」  さっき持ってたぬいぐるみかな? と思うんだけど、それよりデカいような。こんなの四ノ宮の家には似合わないだろうし。……さすがにオレに聞かずに、これはおしつけないだろうし……。デカすぎるもんね、無いよね。  親戚か何かにあげるとか、かな? 「いくら?」 「……ちょっと高くてびっくりした」 「だよね、さっきので、四千円くらいしたもんね」 「ぬいぐるみって、高いんだね。知らなかった」 「……うーん、オレもあんま買わないから、知らないけど。あ、お菓子の方、持つよ」  お菓子が入った紙袋を、四ノ宮から受け取って、二人で並んで歩き出す。  大分人は少なくなっているとは言え、小さい子連れ以外は、結構まだ残ってる訳で……。四ノ宮が両手でデカいの抱えてると、いつもの視線とは違う目立ち方をしている。なんか。おもしろ……。  クスクス笑いながら、四ノ宮を眺める。 「……そういう姿、絶対、学校ではしなそうに見える」 「そういうって?」 「……カッコつけてない感じ?」  そう言うと、四ノ宮は、はー? と苦笑い。 「オレ、そこまでカッコつけてる?」 「……自覚無いの?」  え、まさかの? 自覚なし?? 「別に、普通にしてるけど……」 「オレは王子ですって顔してるよ?」 「……してねーし」  クスクス笑ってしまいながら言ったら、ジロと睨まれるけれど、なんかぬいぐるみの入ったデカい袋を抱えてる四ノ宮に睨まれても、もっと可笑しくなるだけで。 「なんかそのかっこ、ほんと面白い」  あは、と笑いながら、スマホを取りだす。 「写真撮る気じゃないよね」  ムッとしてるけど。 「だって……四ノ宮に見せてあげたいんだよ」 「別に見たくないけど?」 「良いから、こっちからどう見えるか、見てよ。そしたら消すからさ。はいはい、こっち向いて」  なんか面白く無さそうではあったけど、ふ、とオレの方を見た四ノ宮を写真にとる。 「ちゃんと撮れた」  確認してる間に、車にたどり着いて、四ノ宮が、はいはい、とか言いながら、リモコンキーでロックを解除する。 「後ろ開けて?」 「うん」  でっかいぬいぐるみをやっとトランクに押し込んでから、車に乗り込む。 「ほらほら、見てみー?」  四ノ宮にスマホを渡して、撮った写真を見せると。  シートベルトを着けてから、スマホを覗き込んできた四ノ宮は、少しの間眺めてから苦笑い。 「……うんまあ。結構注目されてたのは気づいてたけど」 「かなり注目されてたよー。しかも子供が居るパパさんとかが持ってるならまだしも、オレと四ノ宮でって……」  クスクス笑ってしまう。写真の中の四ノ宮は、ちょっとむくれてるように見えて、なんかちょっとかわい…………じゃなくて、なんか、面白い。  とっさに浮かんだ単語を打ち消して、思い直しながら、スマホを閉じた。

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