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第286話「平気じゃない」*奏斗 ※

 色んな抱き方をする奴が居る。  同じ正常位だって、やり方が違う。  オレの気持ちいいとこ、好きな抱かれ方、一回で分かってくれる奴ってなかなか居ないから、自分で気持ちよくなれるように、動いてた。……抱かれている間も、わりと余裕があったし。そんなに気持ち良くない日でも、相手に分からない位に、演技することも可能だった。のに。 「っ……し、のみや……」 「……ん?」  息をひそめて名を呼ぶと、四ノ宮が動きを止めて、オレの頬に手を這わせて視線を合わせてくる。完全に、男って顔をしてて、気持ち良さそうで……ずき、と体の奥が、疼く。なんだこれ。なんでか、泣きたくなる。 「……っ……」 「何、奏斗?」 「……なんか、ごめ……」 「え?」  なんかオレ。体。ほんとに、ヤバい。  嫌とか。言ってるくせに。 「……きもち、くて…………イっちゃい、そう……」 「……何それ。何で謝んの?」  笑いを含んだ声で言った四ノ宮に、頬にキスされる。 「いいよ。どんだけでも。イって」 「……っ……」  脚を開かれて、奥を突き上げられて、声も出せずに達した。  少しの間、息をひそめてたら、四ノ宮のキスが重なってくる。 「……ん、ん……ぁッ……っ」    そのまま……中、気持ちよくなったまま突き上げられて。  四ノ宮の好きに動かれて、快感に眩暈がする。 「し、の……ッ……」  ぎゅ、と四ノ宮にしがみつくと、またキスされる。  四ノ宮に追い立てられて、翻弄されたまま。  声、抑えることもできない時間が、続いて。  唇を噛みしめると、すぐに、キスで解かれる。    最後は、一緒に達して。抱き締められた。  ゴム越しだけど中で、四ノ宮がイくと、オレを抱き締めてる体からそれが伝わってきて、余計、ゾクゾクする。中から抜かれるだけで、びく、と震えてしまう。 「……奏斗?」 「……っ……ん……?」  汗で張り付いた前髪を掻き上げてくれながら、四ノ宮がオレを見下ろす。 「……平気?」 「……」  思わず、首を横に振る。  全然、平気じゃない。  もうほんと。やばい。  ――――……どうして、こんなに、気持ちいいんだろ。  よく、覚えてないくらい。……経験、あるのに。  キスも、入れられても、ただ気持ちよくて。  ……なんか……本気で四ノ宮じゃなきゃだめになったらどうしようって、思ってしまう。  クラブで、割といい感じだった奴に、少し腰に触れられただけで、ぞわっとして。……あれは、何で……今まで全然平気だったのに……。  考えながら、うと、と寝てしまいそうになる。 「いま、めちゃくちゃ眠いでしょ、奏斗」  なんだか、やたら優しい声がして、横になって向かい合わせで抱き寄せられる。 「……シャワー、明日ね」  腕枕でオレを抱き締めたまま、クスクス笑う気配。  ――――……もう我慢できない位、指先まで眠い。  きゅと握ったオレの手を、四ノ宮が空いてる手で、上からぎゅ、と包んだ。 「手ぇあったか…… かわいーね……」  クスクス笑う声がして、四ノ宮の手が頭を撫でる。なんだか、気持ちよくて。  ……もうなんか、心地よすぎて。そのまま、一気に眠りに落ちていた。

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