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第292話「ストーカー?」*大翔

 五限が終わって、駅前から五分位離れたビルの中にできた焼き肉屋に到着。  外に列が出来ていたけれど、もう中で待っていることを伝えて、店内に入れてもらった。  オープン初日、張り切ってる感じで、店員の元気な挨拶が飛び交う。  中を見渡すと、サラダバーやドリンクバーが中央にあって、厨房が丸見えになってる。開かれてて、良い感じ。  元々入ってた四人と、今一緒にきた四人で、八人掛けのテーブル席だったが、隣との間は完全に壁があるし、換気がいいのか、煙もそんなにはひどくない。 「良い感じの店だな」  オレがそう言うと、「肉もうまいよ」「サラダもー取っておいでよ」と先に食べてた皆が言う。 「でも値段結構するんだよねー。今日は全品安いけど」 「でもいいよねえ?」  今日は女子三人。男子五人。女子が来るとは思ってなかった。  隣に座ったのは、まあ、わりとよく話す子だけど……多分ちょっと意識されてる子なので、ちょっと微妙。まあスルーするしかない。  なんかもう、奏斗以外に構う気ないしな……。  そんなことを思ってるのは知らないその子は、大翔くんは、と色々話してくる。  色々話しながらも、周りの男子にも話を振りつつ、メニューで注文を決める。注文を終えて、立ち上がった。 「サラダバー行く」 「じゃあオレもー」  と後から一緒に来た皆が立ち上がる。  サラダバー色々種類あるな。……ドレッシングも、普段見ないような味のも並んでる。  ……奏斗どれが好きかな。今度ここ、連れてこようかな。どんな味が好きなのか知りたい。 「香織ちゃんて、大翔狙いだよなー」  隣に来て、こそ、と囁かれる。「香織ちゃん」は隣に座った女子の名前。 「そうなのか?」 「えー見てれば分かるじゃん」  ……分かるけど。分からない振りが一番楽。 「嘘だろ? 鈍い……ていうか、モテすぎて、麻痺してんのか」 「そういうことじゃないよ」 「だってもうバレバレじゃん、大翔くん大翔くんってずっと」 「つか、お前声でかい」  そう言った時。隣に居た人が、ふっとこっちを見た。 「あ。四ノ宮じゃん」 「え。あ。相川先輩……」  この人が来てる、てことは……。  思わず見える範囲を探してしまう。  相川先輩は、オレを見て笑顔。 「大翔って聞こえたからさ。奇遇だな~……っつか、安いからか。お前も並んだの?」 「いや、オレ今日五限なんで、四限の友達が並んでて」 「あぁ、そうなんだ」  はは、と笑って、相川先輩は、右方向に視線を向けた。 「オレは、翠とかユキとかと並んでてさ」 「そうなんですね」  居るのか、ここに。……ああ、じゃあ、連れて帰れるかな。……つか、時間合わせないとさすがに無理か。テーブルに行ったら嫌がるだろうし。先走って考えていた時。 「う、わー、何でお前、居んのー??」  背後から聞こえてきた、聞き慣れた声。  ……ぷ、と笑ってしまう。 「もしかして、ストーカー……??」 「……何でですか」  空のグラスを持ったまま、オレを見上げて、とっても嫌そうな奏斗の顔に、苦笑い。 「お互い、オープンの日に並んで入ろうなんて おかしな友達が居るってことじゃないですか?」 「あ、オレが言ったの、それ。今日四限だし、並べば入れるかなーって。おかしなとか言うなよ」  べ、と舌を出した奏斗に、軽く睨まれる。  隣で、相川先輩も笑ってる。

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