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第304話「照れる??」*奏斗
連れてこられたのは、バスルーム。
戸惑ってる間に、シャツを脱がされた。
「一緒にシャワー浴びちゃお」
言いながら、四ノ宮も上を脱いで、洗濯機の中に放ってる。
「下も脱いでね」
「なんで一緒に」
「さっさと入って、ゆっくりお茶したいから。……脱がせてほしい?」
「……っ」
もう意味わかんないけど、逃がしてくれそうな感じは全く無い。
なんだかもう、諦めてベルトを外し始めると、四ノ宮は自分も下を脱いで、ポケットに入ってたスマホや、つけてた時計やら諸々を外した。オレのも受け取ると、脱衣所のカゴに置く。
「はいOK、奏斗、おいで」
子供に言うみたいに優しい口調で言いながらオレの背に触れて、バスルームの中に押し込んで、ドアを閉めた。
「――――……」
なんだかな、もう。
……いつもは、自分ちでお風呂入ったらおいで、て感じなのに。
何で今日は、こんな強引に一緒に入らされてるんだろ……。
四ノ宮がシャワーの出始めがお湯に変わるまで待っている間、なんとなくその後ろ姿を、眉を顰めたまま、見つめてしまう。
なんか。……ほんと良い体、してる。むかつくくらい。
背高いし。手足長いし。良い感じに筋肉ついてて、男っぽくて、かっこい……。って、一般的に言って、ってことだけど。うん、そう。……別にオレがカッコいいって思ってるわけじゃない。うん。
……オレ、寝る相手にはイイ男を選んできたと思う。その方が経験多いしそこそこ上手い奴が多いだろうって思ってたから。あと、他にも遊び相手が居るような奴の方が、気楽だったから。
……なんかでも……。さすが「王子」とか言われるだけあって。
今まで抱かれてきた中でも。こいつがダントツで、スペック、良いんだろうなぁって……思ってしまう。
それに、四ノ宮は、自分勝手にオレを抱かない。始める時はオレの抵抗とか無視してる気がするけど……。抱き方、独りよがりに自分の快感を追う奴とかとは、正反対。気持ちよすぎて、ほんと、困る位。
こんな風に、女の子、抱いてきたなら。
ほんとに、モテたんじゃないかなぁと、思っちゃうくらいで。
セックスが、うまいとかへたとかじゃなくて……。
優しい……?
……って。
……ちょっと何言ってるか、分かんなくなってきた。オレ。
「っぶ」
何だか良く分からないことを延々と考えていたら、突然、顔にシャワーがかかった。そのまま髪を流されて、体にもお湯がかかる。オレを濡らした後、四ノ宮は自分もシャワーを浴びてから、一度シャワーを止めた。
「お湯に入りたい?」
顔の雫とともに髪をかき上げてたら、聞かれて、つい、うん、と答えてしまった。四ノ宮が湯舟にお湯を溜めだしてから、一緒に入ることになるのではと気づく。やっぱり無しと言おうとしたけれどかぶせて、「頭洗ってあげる」と言われて、言葉が止まってしまった。
「目つむってて」
笑みを含んだ声でそう言って、四ノ宮がシャンプーを手に取ってオレの髪に触れる。真正面で向かい合って、頭洗われるとか。絶対おかしい……。でもなんだか例によって例のごとく、なぜか抵抗できず、もうあきらめ気分で、少し下を向いて、目をつむる。
「気持ちい?」
クスクス笑う声が聞こえてきて、ん、と頷く。
なんかもう難しいことは考えず、今気持ちいいかどうかだけで、返事をした感じ。
しばらく優しい手つきで洗われて、「かゆいとこ無い?」と聞かれて、首を振る。「流すよ」と言われて、シャワーがかかった。綺麗に流されてから、ふと、四ノ宮を見上げた。
「ありがと……オレも、洗う??」
なんとなく、洗い返した方がいいのだろうかと思って聞くと、四ノ宮は、え、という顔をして固まった。そのまま、口元を拳で軽く押さえて「んー……」と考えこんでる。
……何。嫌なの? ヒトのこと洗っといて? 別にオレだって、すっごく洗いたいってわけじゃ無いけど、でも。……意味分かんないなもう。思わず眉を顰めると。
「……なんか、すげー照れるから、今日はいいや」
「…………は?」
「また今度やって?」
四ノ宮の言葉と表情に、しばし、ぽかん、と見つめてしまう。
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